【次に流行るもう一曲】
サカナクション「多分、風。」
発売を延期してまで入念に作った新曲
伊藤 2曲目はサカナクションの「多分、風。」。去年発売されたシングル「新宝島」から1年、8月に一度はリリースが発表されたけど、延期してまで念入りに制作した作品だということです。タイトルといい歌詞といい大人の品格を感じる。音は少なく多くを語り、その先には無限のイマジネーションを残している。さすが、と思いつつもズルイ、とも思う(笑)。
山口 もはや貫禄を感じさせますね。エレクトロをロックバンドのシーンに持ち込んで、ど真ん中に存在するようになりました。新しいメディアやテクノロジーを積極的に取り込んでいて、日本の音楽シーンを引っ張っているバンドだと思います。昨年NHKのチームが作った8K映像「Aoi」も素晴らしかったです。SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)のVR/AR Trackに出品されていて、注目を集めていました。
伊藤 SXSWと言えば、山口さんはJAPAN HOUSEのプロデューサーをやってましたね。SXSWは音楽と映画とテクノロジーの世界最大のイベントだと山口さんから教わりました(笑)。
山口 そうですね。今年の3月は、ジェミノイドの石黒浩大阪大学教授のセッションや展示をしたのが話題で、「USA TODAY」の一面を飾ったのにはびっくりしました。
伊藤 あ、それ見ました。日本人が創るものってこれまでも世界中で評価されていると思いますが、これからも予想しなかったものまで多方面で出ていきそうだなって思いました。遊びの延長戦なのか? 研究者マインドでマジなのか? または日本人が持つ気質なのか? そういう意味ではサカナクションにも言えることで、今回の「多分、風。」もサウンド的には懐かしい感じのテクノポップとバンドのミクスチャー、なんとなく電気グルーヴの「Shangri-La」を思い出させるんだけど……でも、いったいこのバンドはどこに向かっていくんだろうって予測不可能なバンド。
サカナクション「多分、風。」
ビクターエンタテインメント 2016年10月19日発売
完全生産限定盤[CD+Blu-ray]2,280円、完全生産限定盤[CD+DVD]1,980円、通常盤[CD]1,200円(税抜)
■サカナクションは2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビューを果たす。2013年にはNHK紅白歌合戦にも出場。2015年に公開された映画『バクマン。』では音楽を手がけ、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞する。2016年夏には、地元北海道で、野外で行うオールナイト複合カルチャーイベント「SAKANATRIBE」を開催。
■「多分、風。」作詞・作曲/山口一郎
http://sakanaction.jp/
Column
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2016.10.14(金)
文=山口哲一、伊藤涼