「子どもは中さ連れてけねぇんだから」
すでに到着していたと思われる他の親戚たちは、屋敷の奥の大きな座敷に集まっている様子でした。
冷たい廊下を案内されていると、ガヤガヤと声が聞こえる襖の少し手前で、先導していた黒い着物のおばさんが不意に立ち止まりました。
「あの……?」
「『あの?』じゃねぇでしょ。子どもは中さ連れてけねぇんだから」
戸惑う両親にとわざとらしいため息をついたおばさんは両親の間を割くように手を伸ばし、廊下の途中にあった小さな和室の引き戸を開けました。
「この子はこの部屋さ置いてきなさい。子ども向けの本も、まだなんぼか残ってたはずだて。暖房もあるすけ」
追い立てられるように押し込まれたその部屋は、古びた茶色いエアコンと押入れ、あとは小さな折りたたみの机があるだけの4.5畳ほどの小さな和室でした。
父が気を利かせて押入れから布団を出して敷いてくれていると、母はエアコンの暖房を点けながらYさんの前にしゃがみ込んでこう言いました。
「ねえ、お母さんとお父さんちょっと親戚の人たちと長いお話合いしなくちゃならないの。だからここで大人しくしていてくれる?」
「……うん」
頭を撫でてくる母と、その後ろで眉間にしわを寄せている親戚のおばさん。
「じゃあ、すぐ戻るからな」
最後に部屋を出た父が笑顔で白い引き戸を閉めると、物音がすっとシャットアウトされたように静かになり、暖房の音だけが部屋に響きました。










