「子どもに聞かせるようなもんじゃねっかね」
それから一眠りした後、眠い目をこすりながら顔を上げると、車はいつの間にか目的地である大きな焦げ茶色の屋敷に、ゆっくりと速度を落としながら近づいていました。
「着いたの?」
「ああ、着いたぞ」
「降りたらママから離れないで、親戚の人にもちゃんと挨拶するのよ」
「……うん」
もはや意識できないほど鳴り続けていた車のエンジンが切られると、辺りには自分たちの足音しかしないことに気がつきました。
大きな玄関扉を開けて中に入ると、どこもかしこも黒々、ツルツルとした木でできていたそうです。
Yさんは物珍しさに辺りをペタペタ触っていると、母にクイっと引っ張られ、相手が誰かもわからないままお辞儀をさせられました。
「遅くなりました」
「そりゃいいけども、あんたら子どもなんか連れてきて、なにすんだね……」
黒い着物を着た親戚のおばさんが困惑と苛立ちの表情でYさんを見下ろしていました。
「預ける場所がなくて」
「子どもに聞かせるようなもんじゃねっかね……ま、いいて。どーせ子ども預ける親戚も、たいしておらんがだろ。はぁ、変な影響、出んといいんだけどねぇ」
子どもながらに、なにか自分のせいで文句を言われていることはわかりました。手を強く握りしめると母は自分をパッと見下ろし、優しさと気だるさが混じったような表情を見せました。










