首のない小さい男の子の影がスゥーー
その日は夜の8時ごろに目的のお寺に着いたというNさん。
山奥の誰もいない、というより廃寺となっていた場所だそうで、バイクを停めるとフラッシュライトを取り出し、ライダースーツを突き抜けるような寒さに身を縮めながらお寺に向かって歩いていったのだそう。
「俺、写真とかは撮らないんだよ。ぐるぐる回って雰囲気楽しむだけ。そのときも一周回ってさ、最後にもう一周行くかって角曲がった時にさ、意識なくなったんだ」
「えっ!?」
思わず小さな声をあげる後輩の女の子。嬉しかったのか、N先輩はニヤッと笑うと話を続けました。
「起きたらさ、お寺の本堂の中で寝ていたんだよ。誰かに毛布被せられて。慌ててスマホ見たら2時間も経っていたんだぜ」
月明かりだけが照らす薄暗い本堂の中。
薄い障子戸はどこもぴっちりと閉じられ、人の気配はない。
自分は一体誰にここに連れられてきたんだ……――当然、酒なんて飲んでいなかったはずなのに記憶がぽっかりと空いている。そのことに、今になって猛烈な恐怖が湧いてきた、そのときだったそうです。
「その障子戸の外、多分縁側か外廊下みたいなところにさ、首のない小さい男の子の影がスゥーーーー……って現れたんだよ! あはは、俺超ビビっちゃってさー! 怖いだろ! なっ!?」










