「ぼくの知的好奇心をくすぐってくれる、弟のような存在なんだ」

 そして左京区浄土寺にある名物書店「ホホホ座浄土寺店」へ。店主・山下賢二さんは、松本さんの京都ライフに欠かせない人物。山下さんは松本さんと交流しながら、その時々に松本さんが語った話を記録してまとめ『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』を二〇二一年に上梓、ベストセラーに。松本さんは言う。

「山下くんは、ぼくの知的好奇心をくすぐってくれる、弟のような存在なんだ」

 店を訪れると、山下さんが「いまの松本さんにオススメしたい八冊」を選んでくれた。

「一冊目は、台湾の漫画家・高妍の新作『隙間』。前作『緑の歌』ではっぴいえんどの『風をあつめて』や村上春樹さんの小説が登場することで話題になったので。二冊目は、編集者・岡本仁著『また旅2』。日本全国いろんなところを訪れた岡本さんの旅の記録です。

 三冊目は、ぼくの十年分のコラムを集めた『君はそれを認めたくないんだろう』。ぼくはガケ書房のころから合わせると二十一年本屋業をやっているので、その節目にと思ってつくった本です。四冊目は、松本さんが興味を持ちそうだなと思った関裕二著『出雲神話の正体』。これはもうタイトルだけでビビッと。五冊目は、韓流ドラマ好きの松本さんに読んでもらいたい後藤哲也著『韓国グラフィックデザイナーの仕事と環境』。韓国の独立系出版と社会運動が重なり合っている状況を知ってもらいたくて選びました。

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