「話をしたら、なぜか息があった。ぼくは滅多にそういうことがないんだ」

 六冊目は伝説の漫画家・坂口尚のSFサスペンス『VERSION』。グラフィックノベルみたいですごくカッコいい。復刊です。七冊目は石の人著『海辺の石』。海辺においてある石のカタログなんですけど、眺めてるだけでも物語が想像できるので。そして最後は、『デイヴィッド・ホックニー作品集』。松本さんはホックニーがお好きなので」

 松本さんは山下さんの説明を聞き終えると、「じゃあ、全部買っていこう」と即決した。

「ぼくと山下くんが出会ったのは何年だっけ」

「ぼくの店がここに移転してきたのが二〇一五年なので、おそらくその辺でしたかね」

「料理家の船越雅代ちゃんのホームパーティで一緒になったのが最初だったのは覚えてる。そのとき、隣に山下くんが座って。話をしたら、なぜか息があった。ぼくは滅多にそういうことがないんだ」

「松本さんはぼくの父親世代ではあるけれど、初めて会ったときからちょっとだけ年上の先輩という感じで、だんだんと友だちみたいな感覚になっていったんです。より絆を感じたのは、 和歌山県熊野地方の神社へ行ったとき。一緒に白装束を着て一生懸命松本さんをフォローしたことで信頼してもらえたのかなって」

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