中学時代の初恋の相手と大人になって再会し、離れていた心を寄せていく過程を描いたラブストーリー『平場の月』。主演の堺雅人さんの相手役を演じた井川遥さんは、リアルで切ない大人の恋愛映画にどう向き合ったのか。
「近年は特に母親役や、誰かの相談に乗るなど、人に寄り添う役が多かったので、一人の女性としての生き様や恋愛を描いた役を演じられたことが本当に嬉しかったです。原作も脚本も、『この二人の幸せが続きますように』と、願うような気持ちで読み進めました」
女性から見る須藤と男性から見る須藤では違う面もある
井川さんが演じたのは、複雑な家庭環境で育ち、自分自身も夫と死別するなど、つらい過去を抱えながら生きてきた須藤葉子。無愛想で素っ気ない須藤は、優しく穏やかな井川さんとは真逆のイメージに映る。イメージとのズレについては?
「土井(裕泰)監督には『芯の強さや太さが須藤のイメージと重なる』と言っていただきました。須藤は中学生の時にすでに『一人で生きる』と決め、人に甘えることももたれかかることもせず、いい意味で孤立して生きてきた女性です。監督は『ツンデレの“デレ”がない人』とおっしゃっていましたが、それははっきりと言い切る口調にも表れていると思います」
原作では、須藤は主人公・青砥健将の視点からのみ描かれており、映像化には難しさもあったという。
「須藤の人物像に対しては、監督も私も同じイメージを抱いていましたが、女性から見る須藤と男性から見る須藤では、やはり違う面もあります。監督の思い描く『須藤像』を自分の中に取り込み、表現しました。
土井監督は、俳優陣がすっと演技に入れるように細やかな気配りをしてくださる方なので、現場の雰囲気がすごくいいんです。そこに太い幹のようにどっしりとした安定感でみんなを包み込む堺さんの存在が加わり、本当にあたたかい現場でした」
