伝統の静置発酵で造るまろやかなお酢

 庄分酢では、昔ながらの「静置発酵」を守り続け、酢酸菌の力を借りながらじっくり時間をかけて発酵させています。

 甕のほかにも蔵に棲み付く酢酸菌が豊富な木造蔵に並ぶ木桶によるお酢造りもあり、環境が変わることで、甕とはことなる風味が楽しめることが、お酢の可能性や発酵のおもしろさを感じさせてくれます。

 この日は、1週間前に木桶に仕込んだばかりのお酢を見学。桶の中をのぞき込むと、お酢の表面にはうっすらと膜が。このベールのような膜こそ、「酢酸菌」の正体なのです!

 酢酸菌はアルコールをお酢へと変える細菌の総称で、近年は見た目の印象から取り除かれることが多く、透明なお酢が主流に。しかし酢酸菌の研究が進んだことで、免疫機能を整えたり、花粉症やアレルギー症状を抑える働きがあることが明らかになり、再び注目を集めています。

「昔から働いている職人さんが、“お酢は甕から出したての味がおいしかよ”って。普通のお酢もおいしいけど、にごり酢は風味が違うと言っていたのも決め手になり、“かすみくろ酢”を復刻しました」(高橋さん)

 後篇では、庄分酢で生まれたお酢のおいしさ、奥深さを楽しめるリストランテとショップをご紹介します。

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庄分酢

所在地 福岡県大川市榎津548-1
電話番号 0944-88-1535
営業時間 9:00~17:00
定休日 日曜
https://shoubun.jp/

CREA 2026年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。