パンダの「なるようになるさ」と言わんばかりの佇まいや個性に引き込まれたと話すのは、ただひたすらにかわいいパンダを集めたパンダグラビア本『HELLO PANDA』や『PANDA MENTAL』の著者である小澤千一朗さん。

 アドベンチャーワールドに通い続け、たくさんのパンダの成長を見守った小澤さんにとって切っても切り離せないパンダに結浜がいました。その理由とは? 結浜の初お披露目日から振り返ります。


“旅立ったパンダたち”結浜

 2016年9月、初お披露目。スタッフに抱っこされて結浜が登場する。ワーという大きな歓声。一斉に切られるカメラのシャッター音。スタッフは、落ちないようにしっかり両手を添えながら、だけど力を押しつけすぎてはいけないケーキを扱うような慎重さで結浜を抱いていた。そして、詰めかけた報道陣や一般客に向けて、結浜の愛らしい顔をむけてくれる。鼻の先っぽはピンク色をしていた。赤ちゃんパンダの特徴のひとつだ。後に結浜のトレードマークになるピコンとした頭の毛はまだ見られなかったと思う。

 印象的だったのは、嬉しさに少し誇らしげな様子がブレンドされたスタッフの表情だった。無事に元気な赤ちゃんパンダが生まれ、育っていること。そして、絶滅危惧種として懸念されているジャイアントパンダの繁殖における貴重な成果であること。激しいプレッシャーと責任感を背負い込みながら、パンダの奇跡に大きく関わっている覚悟が、印象的な表情をつくりだす。そんなふうに思った。

 パンダはとてつもなくかわいい。同時に、そのかわいいとセットになっている大変さやプレッシャーがある。その部分を知ることができたのは、アドベンチャーワールドのパンダにより近い現場で多くの取材と撮影をさせていただいたからだ。だから、最高にかわいい赤ちゃんの結浜を抱っこしながら、妙齢のオジサマにはミスマッチに見える耳付きのパンダの帽子をかぶって微笑む飼育スタッフ……そんなかわいいでしかない世界で、(中国の男性)スタッフの目が力強く輝いていることに、ついついピントが合ってしまう。結浜のかわいい瞬間を追いかけながら、一番近くでそれを見つめる人の目に惹きつけられる。わたしたちのパンダ本には、パンダだけでなくそれに関わるスタッフが写り込んでいるものが多い。

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