パンダの魅力とは……?
パンダはただかわいいだけじゃない、パンダがいなくなって寂しいだけじゃない。それではいったい、中谷さんがあえて一言でパンダについて表現するとしたなら、それはなんだろうか。
「パンダは深いです。パンダはもちろん野生動物なんですが、野生動物っぽくない瞬間もたくさんあります。例えば、他の哺乳類と同じ5本指なのに、コブのような種子骨や副手根骨を上手に使って、人間がモノをつかんで食べているのと同じような姿になりますね。そこに惹きつけられる方も多いと思います。でも、見えてる部分がすべてじゃないんです。と言っておきながら、やっぱり見たまんまにかわいらしいのも本当の姿なんです。そういう、どこまでも不思議に満ちているパンダの物語は深いのです」
飼育スタッフの中谷さんのシグネチャームーブ? のひとつ。それはパンダラブでもブリーディングセンターでも、美味しい竹を求めるパンダに、ドサっと竹を投げ入れる光景。わたしにとっては、それがアドベンチャーワールドのパンダ観覧におけるひとつの風物詩でもあった。最後の最後に中谷さんはどのパンダのために竹を投げ入れたのだろうか。中谷さんがパンダの飼育スタッフになってからの8年間、ずっと繰り返されてきた作業。その最後。できることなら、それをスローモーションにして見ていたかった。そんなことをつい調子に乗って話した。
「その最後のパンダはブリーディングセンターの屋外運動場にいた彩浜だったんじゃないかな」と、中谷さんは笑った。このとき、きっと中国でも美味しい竹がくるまで催促を続ける彩浜の姿を、お互い想像していたと思う。
*パンダは正式にはジャイアントパンダと呼びます。このコラムでは、日々、筆者がそう呼んでいるパンダと書いています。
アドベンチャーワールド
所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399
電話番号 0570-06-4481(ナビダイヤル)
営業時間 10:00~17:00 ※季節により異なる
https://www.aws-s.com/
Column
アドベンチャーワールドから旅立ったパンダ
アドベンチャーワールドから、良浜(らうひん)、結浜(ゆいひん)、彩浜(さいひん)、楓浜(ふうひん)が旅立ってから数カ月が経ちました。パンダたちの旅立ちが決まってから、飼育スタッフが抱いた気持ちとは? また当日の様子はどのようなものだったのか。そして、広報スタッフが明かす、永明と良浜の裏バナシやアドベンチャーワールドの“これから”などについても伺いました。取材・執筆は、ただひたすらにかわいい、パンダを集めたパンダグラビア本『HELLO PANDA』の著者である小澤千一朗さんです。
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- 文=小澤千一朗
写真提供=アドベンチャーワールド
