仕事にやりがいを感じながらも、時には疲れたり、自信をなくしたり——。そんな誰もが抱く揺らぎを、実直な言葉で綴ってきた山崎怜奈さん。最新刊『まっすぐ生きてきましたが』は、4年以上続く連載をまとめたエッセイ集。書き続けることで見えてきたと言う、心の整え方や働く意味、そして時代との向き合い方について話を伺いました。
「何のために働いているのか」という問いに答えが出せた
――『Hanako web』での連載を4年以上続けてこられて、書き続ける中で気づいたことはありますか?
Hanakoという、食やカルチャーなどのライフスタイルの提案をする媒体で連載させてもらえることになって、自分の暮らしのことも振り返るようになりました。10代の頃から乃木坂46に在籍して、そこを離れてからもがむしゃらに働いてきたので、その視点を持てたことはとても新鮮だったし、大きな変化でした。暮らしを豊かにするってどういうことなんだろうということに着目して連載を続けてきたら、少しずつ解像度が上がってきた感覚があります。
今作は、Hanako webの連載をまとめた本としては2冊目なんですが、周りからは「前作より限界労働者みが深い」って言われていて(笑)。仕事は好きで頑張っているんだけれど、どうしようもなく疲れてしまう日とかもあるよね、ということを隠さずに綴っています。嘘をつけない不器用な人間なので、思うがままに書いていたら等身大の文章になりましたね。
――28歳の女性としての目線が色濃く表れている文章ですよね。仕事のやりがいを感じる一方で、時には疲れたり落ち込んだりもする。そのリアルさに『CREA』読者も共感されると思います。生活への眼差しの解像度が上がったことで、何か変わったことはありましたか?
心と体のバランスが整いやすくなりました。「私って、何のために働いているんだろう」とむなしく感じることが、いつの間にかなくなっていました。
――「何のために働いているのか」という問いの答えは出ましたか?
「生活のため」と言い切れるようになりました。だからこそ、生活のためにきちんと休もうと思えるようにもなりましたし、自分の軸が太くなってきた感じがします。心がゆらいだ時に以前よりもずっと早く戻ってこられるようにもなりました。
――素晴らしいですね。うらやましいです。自分の機嫌をとるのがうまくなった感覚ですか?
そうですね。もともと自分の機嫌をとるのは得意なタイプではなかったんですが、機嫌の取り方のレパートリーが増えました。
――ご著書でも、自分の機嫌を良くするために自炊をすると書かれていらっしゃいますね。
あとは、踏んだり蹴ったりの状況に陥ったときは、一度引きで自分を見つめて、笑えるポイントを探すようにしています。今の瞬間だけを点で見たらつらいかもしれないけれど、少し引いて線として見てみると、「我ながら面白い経験してるんじゃない?」と思えることもあるんです。もちろん笑えないくらいダメダメな時もあるけれど、結局、何をどう面白がるかは自分次第ですから。
