占い師からの「晩年さみしい」の言葉が原動力に

――本作では、身寄りのない人を弔う牧本の姿が描かれます。おひとりさまの老後や孤独死について、改めて思うことはありますか?
阿部 今回、取材を何回か受けている中で、独身の女性の方がいらっしゃったのですが、作品を観て「私のことだ」と思い、ずっと泣いちゃったらしいんですよね。周りに人がいない生活は哀しかったりすることがあるんだなと、改めてすごく思いました。今はコロナ禍ですけど、また近所付き合いみたいなことからできるようになるといいなと思ったりもしました。
水田監督 特にこの2年少し、ひとり暮らしの方にとっては本当に孤独感が強いと思う。
阿部 そうですよね。
水田監督 肉体がなくなるという物理的な死よりも、今言ったように孤独であることが人にとってどれぐらいつらいのか、ということが原動力でした。老後で言うと、僕はね、30代のとき手相見の人に2回「晩年さみしい」と言われているんですよ。
一同 (笑)。
水田監督 それで、ものすごく仕事のギアが入ったというか。つまり自分にとって一番何がさみしいんだろうと考えたんです。僕はサラリーマンディレクターなので、人事異動で演出ができなくなるかもしれないし、定年退職でできなくなるかもしれない。そうなると、やっぱり演出したり現場でスタッフと一緒にいること、あるいは阿部さんを撮っていることが幸せだとしたら、それが続けられなくなるのがさみしいことなんだろうと。それまではノリで仕事をしていたのが、すごくギアが入ったんですよね。

阿部 それはすごくよかったですね。
水田監督 手相見のおかげですね。連続ドラマだけじゃなくて、映画の企画書を書いたり、舞台の演出を始めたりした理由はそこにありました。
阿部 水田監督にとっては悪い占い師じゃなかったんですね。そういうこともあるんですね。
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- 文=赤山恭子 
 写真=平松市聖
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