刺激にあふれたパネルディスカッション

「ラテンアメリカ・ベストレストラン50」の発表前に行われるパネルディスカッションは、現代ラテンアメリカの食をテーマにした円卓会議。

 「ラテンアメリカ・ベストレストラン50」の表彰式に先立って行われたのは、シェフ、学者、ジャーナリストら食の有識者によるパネルディスカッション。

 料理はインターナショナルにお互いの意見を交換できるテーマ。シェフやジャーナリストが聴衆なだけに、内容は専門的だが料理に対するアプローチがそれぞれ異なって、とても興味深い。

ミシェル・ブラスの土地に根ざした料理の話に、会場全体が耳を傾ける。

 まずは、フランス料理界を代表する自然派のシェフであるミシェル・ブラスの登場に誰もが注目。彼は、フランスで最も影響力を持つシェフだ。1960年代は成功を求めてパリに住んだこともあったが、70年代に農業や地方に目が向き、「世代に引き継がれる料理というのはその土地に合ったものである」という考え方に至ったとか。

 そして、今もフランス中南部で「ミシェル・ブラス」を営むが、その名声は世界的。北海道の「ザ・ウィンザーホテル洞爺 リゾート&スパ」に「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」という唯一の支店を持ち、日本でもよく知られている。彼のスピーチの締めくくりの言葉は「土地を愛せ(Love your land)」だった。

ニコラ・トウィリーは、ジャーナリストとして料理の素材の安定した供給や安全性について語った。

 サイエンス・ジャーナリストのニコラ・トウィリーの話には、多くの観衆が耳をそばだてた。彼女は、食材のライフサイクルに注目し、冷凍保存だけではなく酢漬けや発酵などの方法で保存して供給するという考え方や、遺伝子組み換えが飼料から入り込んでいるという事実を紹介したのだ。

 その他にも、生物学者はトレーサビリティにおけるラベルでの情報開示の重要さを説き、料理従事者は、グローバル・ネットワークについての話を披露した。

ニューヨークから来たジェームズ・ビアード賞受賞シェフ 、ワイリー・ダフレインもパネリストの一人。彼の美しい一皿がスクリーンに映し出された。

 2015年の「世界ベストレストラン50」で2位を獲得したイタリアの「オステリア・フランチェスカーナ」のララ・ギルモアは、料理がアートから受けるインスピレーション、そして、言葉の壁を越えて料理について説明する際の写真やアートの有用性など、料理とカルチャーの関係性を語った。

会場のランチで出たコンチャ(貝形のパン)はメロンパンそっくり。メロンの風味はないが、外はぱりっとして、中はしっとり、かなりおいしい。

2015.12.28(月)
文・撮影=小野アムスデン道子