いつかはバーバリーと思っていた人を納得させる、ある転身
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あなたにとって“バーバリー”とは、どんなブランドだろう。高校生の時、まるで制服のように“あのチェック”を首に巻いていたという人がいれば、いつかはバーバリーと憧れ続ける人もいる、とんでもなく広いイメージを持つブランドなのは確か。ライセンスもののブルーレーベルの人気がとてつもなかった一方で、主に直営店でしか買えないインポートものもステイタスを保ち続けたからだろう。結果、日本でもっとも有名な“ブランド”のひとつになった。
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ところが、今秋そのライセンスものが消える。正直今まで10万円台で買えたトレンチは、2倍近い価格となる。でも真のファンにとっては、むしろ喜ばしい流れかもしれない。いつかは、と思っていた人は、英国仕立ての誇り高いバーバリーをこそ、自らが凛々しく着こなせるようになってから満を持して着たいと思っていたわけで、高校生にアラされたくないのは当然。
ここのトレンチはやはり究極で、リアルに“一生もの”にできる、きわめて希有な“名品”。だからやっぱり憧れであり続けてほしいのだ。考えてみれば、すぐ身近にあるずなのに、手をのばすとするっと逃げる、そんな絶妙な距離感がバーバリーの持ち味だったわけだが、まさに今、するっと逃げられ、追いかけたくなっている。
2015.12.02(水)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫
CREA 2015年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。