世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第98回は、芹澤和美さんが、ベトナム戦争終結から40年を迎えたかの地で、戦時の記憶を巡る旅に出ました。
ベトナムを南北に分断していたヒエンルオン橋を歩く
フレンチと融合したおいしい料理、郷愁かきたてる古都や活気に満ちた都会、そしてローカルの優しい笑顔。魅力が数えきれないベトナムは、女性にも人気の旅先だ。そんなベトナムは今年、南北に分かれて戦ったベトナム戦争終結40周年という大切な年を迎えている。
ベトナム戦争は、ひとことで言えば、1960年代初頭から始まった、南ベトナム(南ベトナム政府とそこに介入したアメリカ)と、北ベトナムとの武力衝突。1975年、南ベトナム政府が崩壊して終結、北ベトナムにより一つの国に統一された。中部を旅した今年5月、おりしも終戦記念日(4月30日)から数日後に、南北分断の境界線だった場所を訪れる機会に恵まれた。
ベトナムの中部にあるベンハイ川は、1954年のジュネーブ協定締結からベトナム戦争が終わるまで、北と南を分けていた場所。軍事境界線だった北緯17度線に沿って流れていることから、この川を中心に約4キロが、非武装中立地帯(軍事活動ができない地域)と決められていた。川に架かるのは、ヒエンルオン橋。現在は近代的な橋に架け替えられているが、その隣には当時のものが保存され、歩いて渡ることができるようになっている。
川の北側に立っているのは、分断されていた当時から旗が揺れ続けるフラッグタワー。戦争中は、非武装中立地帯であるにもかかわらず、何度も南ベトナムに破壊され、そのたびに立て直し、旗がはためかない日は1日もなかったという。フラッグタワーのすぐ近くには、当時の貴重な写真や武器などが展示されている記念館もある。
右:記念館に展示された写真。展示物を見ると、ベトナムの人たちがいかに苦しめられたかが、よく分かる。
2015.08.11(火)
文・撮影=芹澤和美