【WOMAN】
仲むつまじいけど、関係は空虚。それでも手を離さないのが、夫婦。
マンガ家のナイトーと会社員のミーちゃんことミノワは結婚7年、つき合いはもう8年だ。女友達からは〈ミノワんとこはわかりあってるよ 見ててわかるもん〉と羨ましがられる仲。
ナイトーは、ミーちゃんに愛情や思いやりを見せながらも、浮気を繰り返す。そこには何の罪悪感もないが、バレても構わないというようなふてぶてしさもない。〈ひとりの時に ヨメのこと忘れてる 忘れてることが多いね〉というナイトーと、〈一人になると二人を感じる〉というミーちゃん。それぞれの感じ方で、相手の存在を意識しているのに、さみしい病をわずらったままのふたり。
こんな夫婦が正解なのか、幸せなのかと、他者はいくらでも糾弾できるけど、本当のことは当人たちにしかわからない。だって〈ひとりで歩くことなんて考えられない〉と、ふたりは決して互いの手を離さないのだから。こんな夫婦のあり方が、案外羨ましいと思うのは不謹慎だろうか。
『西荻夫婦』(全1巻) やまだないと
互いがいちばんの親友だったようなふたりは、いまとなっては恋し合ったのかの記憶さえおぼろげだ。波風は立たないが、それはミーちゃんが夫の浮気癖を知りながら、呑みこんでいるから。時系列をいかように変えても読め、それによって、この夫婦愛の受け止め方はずいぶん変わる。
祥伝社 924円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2015.08.03(月)
文=三浦天紗子