大阪府堺市は、茶道千家の始祖であり、「茶聖」と称される千利休の生まれた土地。千利休は、大永2年(1522年)に、堺の今市町(現在の宿院西1丁)の豪商魚屋(ととや)の長男として生まれました。現在、屋敷跡には、椿の炭を底に沈めていたといわれる椿の井戸と、ゆかりの大徳寺山門の古い部材を用いて建てられた井戸屋形が残っています。
また、2015年3月には、「千利休茶の湯館」と、同じく堺出身の歌人・与謝野晶子の記念館として「さかい利晶の杜(りしょうのもり)」がオープン。
堺は、お茶好きにとって、ぜひ訪ねてみたい街です。
なので、堺へ行ったら、当然、おいしいお茶を飲みたいもの。もちろん、おいしいお菓子も合わせて。
見つけたのが、チンチン電車と呼ばれて親しまれている阪堺線の神明町駅すぐ、紀州街道に面した「茶寮 つぼ市製茶本舗」。
白壁の重厚な外観。アプローチや高い吹き抜け状になった店内、モダンな庭も、端正で魅力たっぷり。2階には立礼のお茶席もあり、イベントなどで使用されています。店に入って、通りの喧噪を忘れる落ち着きのある空間に立つだけで、非日常の世界に誘われます。
右:高い天井で居心地の良い店内。
「つぼ市製茶本舗」は、嘉永3年(1850年)に、初代、谷本市兵衛が茶問屋・貿易商として堺に創業したのが始まり。160年以上続く老舗です。第二次世界大戦により堺にあった会社は全焼。現在本社はお隣の高石市にありますが、創業は堺の地なのです。
5代目社長が、約350年前に建てられたといわれる建物を入手して、構想から4年をかけて改築。2013年11月に茶寮をオープンさせました。戦争で唯一焼け残った茶の看板を堺に戻すという長年の想いを叶えました。
「建物の一部を一旦解体し、使われている古い柱や梁などの木材を全て生かしました」と、広報担当の谷本美花さん。古い町並みの大半を戦災で焼失した堺市にあって、歴史を感じることができる貴重な建物なのです。
右:古い建築の様子がよくわかる。一角には立札のお茶席も。
2015.06.28(日)
文・撮影=そおだよおこ