兵庫県・明石市は、東経135度の日本標準時子午線上にある「時のまち」。そして、対岸に淡路島を眺める「海峡のまち」。JR、山陽電車明石駅の北側には桜の名所として知られる明石公園、南に行けば、地元の人たちが「うぉんたな」という愛称で呼ぶ「魚の棚商店街」があります。明石ダイ、タコ、穴子など穫れたての鮮魚や塩干物、練り製品などの加工品を扱う店が並ぶ商店街は約400年の歴史があり、瀬戸内海で獲れる明石鯛・明石ダコなどを求めて遠方から訪れる人も多く、にぎわっています。
右:明石と淡路島を結ぶ高速船 淡路ジェノバラインの乗り場も徒歩ですぐ。
そんな魚の棚商店街からさらに南に行くとすぐに海が開け、淡路島への船乗り場もあります。海近くの路地に、2014年9月にオープンした『AKASHI SWEETS Pie saQ。(パイサク)』は、鮮やかな黄緑色の外観と小さな立て看板が目印。梶川喜光(よしの)さんが営む、パイの専門店です。
右:ショーケースには生ケーキやプリンも並びます。
店内のショーケースで、一際目を引くのが魚の形をした大きなパイ。地元・明石出身の梶川さんが「大好きな明石らしいパイを」と創り始めた「akashi鯛パイ」です。3日前までに注文すると、長さ30cm余りの大きくて立派な鯛形のパイを焼き上げてもらえます。中身は、リンゴだけでなく、カレーやミートもオーダーがOK。誕生日や記念日のお祝いにぴったりと、大好評なのだそう。
梶川さんは、学生時代、ソフトボールの選手として活躍。大学を卒業して大手スーパーマーケットに就職しましたが、「自分の創ったもので、幅広い年代の人に喜んでもらえるような仕事がしたい」と、スイーツの道へ転職。兵庫県・加古川市の洋菓子店で働き始めます。神戸の有名ホテル出身のチーフの元で腕を磨き、「興味がなかったケーキが大好きになりました」とにっこり。「自分の店を持つと決めましたが、地元には老舗のケーキ屋さんがすでにあります。パイの専門店にして、サクサクしたパイのおいしさを知ってもらえたらと考え、店名もパイサクとしました」。
梶川さんは「普段からおいしいパイを食べてもらいたい」と、まず、素材にこだわりました。国産小麦粉、よつ葉の発酵バター、兵庫県神崎郡「牛尾農場」の平飼い卵、ビート糖。リンゴは長野の農家からの直送。「子供がいるので、安心安全にこだわっています」。
2015.04.12(日)
文・撮影=そおだよおこ