兵庫県・丹波エリアの篠山市は、城下町として知られています。1609年、徳川家康が大阪城攻略の拠点としてわずか9カ月で築いた城が篠山城。城は焼失しましたが、お堀は残り、周辺には1861年に建てられた能舞台があったり、日本最古の木造裁判所が美術館になっていたり。商家や武家屋敷などの古い町並みも残っていて、近年、古民家を改装したレストランやパン屋、雑貨店なども増えています。ぶらりと散策するにはぴったりの街。

左:城下町風情たっぷりの町並み。
右:『岩茶房 丹波 ことり』へはこちらの門をくぐって。
「岩茶」800円~。

 『岩茶房 丹波 ことり』は、お堀の南西にある築150年位の武家屋敷を改装した建物で、小谷咲美さんが2010年から営むお店です。店内は床の間や縁側が残され、松本民芸家具の椅子やテーブルを配した落ち着いた雰囲気。棚には、日本の民芸運動に強い影響を与えたという陶器で、イギリスにルーツを持つスリップウェアの皿やカップ、壷や花器が並んでいます。

左:くつろぎ感あふれる店内。
右:窓際の席も気持ちがいい。

 小谷さんは篠山生まれ。2005年に、お堀の北側の商店街で小さな岩茶専門店を始めましたが、止むなく一時閉店することに。東京の『岩茶房』で2年間修業した後、現在の店舗で再オープンしました。お店では、毎年現地へ出かけて仕入れる『岩茶房』と同じ武夷岩茶24種類と毎日手作りする点心、お菓子を出しています。

 お店で使われ、また飾られてもいるスリップウェアの茶器や皿類は父親で陶芸家の柴田雅章さんの作品。柴田さんは40年前に関東から移り住み、今も伝統的な丹波の土を掘り出して味わい深い陶器を作って、各地で個展を開催しておられます。

 「小さい頃から、家では、毎日午前10時と午後3時がお茶の時間。父が、自分でお茶とお菓子の準備をして家族を呼びに来るという生活でした。そんな父のお茶好きと食いしん坊を受け継いだんでしょうね」と、小谷さんはにっこり。

左:店主の小谷さん。
右:こんなにたくさんの岩茶がずらり。

 お店でのおすすめの飲み物は、中国・福建省、武夷山の岩茶。24種類あって味わいが微妙に違います。稀少な「大紅袍(だいこうほう)」や香り立つ「極品肉桂(ごくひんにっけい)」、4大岩茶のひとつ「白鶏冠(はっけいかん)」など、色々飲み比べたくなります。どれも柴田さんが作った素敵な岩茶用の茶器で出されます。1煎ずつ出し切って、何煎も飲めるのが楽しい。

 他にも、武夷山の紅茶「正山小種(ラプサンスーチョン)」やジャスミンティー「茉莉花茶(まつりかちゃ)」などもあります。

2015.03.22(日)
文・撮影=そおだよおこ