神戸市は「パンの街」として知られています。世帯あたりのパンの地域別支出金額・消費量は、全国トップ(総務省家計調査【平成22~24年平均】)。パン屋さんの軒数ももちろん多く、神戸の街を歩けば、あちこちで見つかるはず。
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『ブーランジェリー レコルト』は、JR兵庫駅北側、住宅街の中にあります。お店の外からも手作りする様子が見え、中に入るとパンが焼き上がる、いい香りに包まれます。小さなお店には、ハード系やおやつパンなど、毎日60種類以上のパンが並び、あっというまに売れていきます。
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右:焼き立てパンが次々にお店に並びます。
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シェフ・ブーランジェの松尾裕生(ゆうき)さんは、神戸生まれ。「臨床検査技師として病院で働いていた20代後半の頃、毎朝3時に起きてパンを焼き、職場の人に食べてもらっていました。パンはイメージで様々な種類ができるから、おもしろくて」。そんなパン好きが高じて病院を辞め、フランスパンで有名な『ビゴの店』で働き始めます。「自己流で作るうちに、パン作りの基礎やパンの伝統を学びたくなったんです」。
3年間、独立を見据えてしっかり技術を身につけてから、自分がやりたいと思う規模と同じくらいの小さなパン屋でも修業します。
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右:花をイメージしたパン。これから焼きます。
パンだけでなく、和菓子も大好きな松尾さん。「小さい頃からあんこが好きでした。和菓子の職人になりたかったほど(笑)。大人になってからは、毎週のように自分で小豆を煮て食べていました」。
2012年4月に自店をオープンしてからは、当然のようにそれらの2つの好きな物が合体。こだわりのあんパンを作り始めます。「次々たくさんの種類のパンを作りたくなって、眠る時間も惜しい。あんこを自分で炊く時間がないのが悩みでした」。おいしいあんこを作ってくれる製餡屋さんと出会い、好みの味のものを作ってもらえるようになります。すると、あんパンのバリエーションがどんどん広がっていったのでした。
「究極のパンは、小麦粉とイーストと塩と水。あんこも小豆と砂糖と水。シンプルな材料を基本に、色々な味わいや食感のあんパンを作ってみたくなって」と松尾さん。現在、あんパンは15種類程。
2015.01.18(日)
文・撮影=そおだよおこ