阪神間は、大正期から昭和初めにかけてモダニズム文化が花開きました。その拠点のひとつ、香櫨園(こうろえん)は、明治40年(1907年)に開設された、当時関西最大の遊園地の名称です。ウォータースライダーがあったという遊園地は大正2年(1913年)になくなりましたが、その地名は今日も残り、阪神電車の駅名にもなっています。駅周辺エリアには、西宮市大谷記念美術館、辰馬考古資料館などの美術館、博物館が点在。閑静な住宅街で海も近く、散歩気分で訪れるのにぴったりです。
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そんなエリアに2011年6月にオープンしたのが『オンコー アン マタン』。フランス人パン職人、パトリス・ペゲロさんが奥様・路子さんと営むヨーロッパスタイルのパン屋さんです。
ペゲロさんは、ブルゴーニュ出身。シェフ・ブーランジェとしてフランス各地やカナダ・モントリオール、コートジボワールなどで、また、香港のホテルではコンサルタントとして、エチオピアや北京では製パン製造責任者として働くなど、30年以上、世界各地でパン職人として活躍してきた人物。日本では、東京のル・コルドン・ブルーや神戸の製菓学校などで製パン教授を務めてきました。
店名は直訳すると「今朝もふたたび」という意味ですが、「今日もまた朝を迎えられたことを喜び、より良い1日を過ごしましょう!」という決まり文句なのだそう。ペゲロさんが焼くパンやお菓子に、そんな思いが込められています。
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右:南仏・プロヴァンスをイメージしたイートインスペース。
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50種類ほどのパンとお菓子が並ぶ店内は、プロバンス風で明るく、工房で次々に作られるパンやお菓子のいい香りが満ちています。
目をひくのは、何種類もあるバゲット。ペゲロさんの自信作「バゲットトラディショナル」は、数種類の粉をブレンドしてフランスの味に近づけたもの。しっかり焼き込まれ、表面の切れ目・クープも美しい。ライ麦を使用した「バゲットカンパーニュ」、天然酵母100%の「バゲットルヴァン」、食感が楽しく食べやすい「シリアル入りバゲット」に、今春、新作のバゲット「クラカント」も加わりました。皮の部分が薄く、「カリッとした」という名前にふさわしい。国産のそば粉を使った天然酵母、フランス産の石臼挽き全粒粉で、豊かな小麦の香りが広がります。さらに、大きく焼いて、量り売りしている「パンリュスティック」「パンカンパーニュ」もあって、フランスパン好き、ハード系の食事パン好きにはたまらない!
2014.05.11(日)
文・撮影=そおだよおこ