グランフロント大阪やあべのハルカスなど、キタもミナミも次々に開発されていく大阪ですが、大阪市営地下鉄谷町線の谷町六丁目駅周辺には、戦災を逃れた町家がまだ残っている「空堀エリア」があります。近年、木造の一軒家を改装した雑貨店やカフェが次々オープン。空堀商店街と町家ショップを巡って下町情緒を楽しむ人が増えています。

個性たっぷりの最中が勢ぞろい。上左から、胡麻胡桃220円、無花果220円、牛蒡190円。下左から、粒餡きなこ210円、粒餡190円。

 そんな谷町六丁目駅から谷町筋沿いにさらに南へ行った所、古いビルの1階にあるのが、『一吉(ひとよし)』。向いの路地奥には、近松門左衛門の墓があります。

 お店の外観は、昔のお菓子屋さんか喫茶店のよう。店内に入ると、木とガラスでできた、どこか懐かしいショーケースが置かれ、中には定番の最中と季節の最中の見本が飾られています。棚には古いお菓子の木型が並んでいたり、かき氷の器械が隅っこに置かれていたり。お店に入っただけで、ほっこりした気分になれます。

左:窓の白い格子が目印。
右:店内の棚に飾られている和菓子の古い木型。

 笑顔で迎えてくれるのは、「こまめさん」こと山本由紀子さん。

「小さい頃から和菓子が大好きでした。父の出身が熊本だったので郷土菓子の『いきなり団子』やおはぎも手作りでおいしかった」。

「こまめさん」と呼ばれる山本由紀子さん(右)とスタッフの小林諒子さん。

 雑貨メーカーに勤め、そこでクッキー部門をまかされた山本さん。かなりの数のクッキーやケーキを作っていたのだそう。会社勤めのあと和菓子屋で働き始め、「和菓子の魅力に目覚めた」とにっこり。その頃、皆、すでに和菓子を食べなくなっていて、最中は主に贈答用。器械で作って冷凍して出荷する現状も知ったといいます。

「また、おじいさんがひとりでやっている町の小さなお店でも働き、色々教えてもらいました。冷蔵庫もなく、おはぎは売れ残ったら捨ててしまう。砂糖を控えるから日持ちはしないけれど、本当においしい和菓子があると知りました」。

<次のページ> こだわりの味噌餡最中、季節の最中も楽しみ

2014.04.27(日)
文・撮影=そおだよおこ