阪神・淡路大震災から20年が経ち、神戸の街は、大きく変化しました。中心街である三宮も、異人館街として知られる北野町も、中華街である南京町も、すっかり変わっています。神戸っ子ですら、かつての佇まいがどうだったか思い出せない程です。がんばって営業を続けている老舗もありますし、新しいお店もたくさんできています。
右:木のぬくもりあふれる店内。
2014年8月8日にオープンした『トースター』は、その名のとおり、パンにこだわる小さな喫茶店。店主・Chaさんが営むお店は、中心街から離れた新神戸駅に程近い場所にあります。生田川の東側、ガラス張りのお店は、通りからもカウンターとテーブル席が見えて、その温かい雰囲気に心魅かれます。
「結婚して子育てをしながらスポーツのインストラクターをしていたのですが、ずっとおいしいコーヒーや紅茶とトーストを出す喫茶店をしたいと思っていたんです」とChaさん。「トースターというロゴも、ずっと前から書いていたんです」とにっこり。
「食パンをトースターでこんがり焼いて、お客様の目の前で表面にバターなどを塗り、熱々をお出ししたくて」とChaさんは言います。そのパンは、山食で、3枚切り。「バターに一番合うと思うんです。分厚く切って、回りはカリッ、中はフワッ。神戸の人は分厚い3枚切りが大好きです(笑)」。
そんなトーストだけでなく、コッペパンのサンドを出そうと思ったのは、本で、岩手県盛岡市の福田パンを知ったから。大きめのコッペパンに似たソフトフランスパンに、餡とホイップクリーム、ピーナッツバター、きな粉などをサンドしたパン。実際に食べてみたい、お話も聞きたいと、わざわざお店を訪ねていったのだそう。「地元の人に愛されるパンは、本当にすごいと思った」。あんバターのコッペパンサンドを出すためにオリジナルのパンを焼いてもらうほど、こだわったのです。
コッペパンサンドのパンは、ブリオッシュ生地と角食の生地を合わせたオリジナルの生地を使用しています。「色々、試作してもらって決めました。ここ『トースター』だけのパンです」。卵が入ったブリオッシュ生地を混ぜることで、時間が経っても固くならない、食べやすいやわらかさに。ぽってりとした、可愛らしさを感じる形、二度焼きすることを考えて薄目の焼き色にもこだわりました。
2015.01.25(日)
文・撮影=そおだよおこ