「写真撮ってもいいですかぁ~」という声の主
女性陣が指摘したのは、Iさんが手早く拾い上げたTさんの携帯の画面。何事かと自分でも画面を見てみると、目を疑うものがそこには写っていました。
かわいそうな
かわいそうな
なかむら あけみ
白い壁に彫られていたあの文字が待ち受け画面に設定されていたのです。
「うわぁ!」
思わず手を離して床に落ちた携帯。Iさんは棒立ちで背を向けるTさんから一歩距離をとりました。
震える3本の懐中電灯で照らされたTさんは、おもむろにこちらに振り返り言いました。
「俺だ……。あのとき、『写真撮ってもいいですかぁ~』って聞いて、携帯で写真撮ったの」
そっとしゃがんで携帯を拾い上げた彼の声は絶望で震えているようでした。
「自分の口から他人の声がしたんだ。誰だって気がつけるはずがねぇ……」
ブツブツと震える声。
「俺、もうダメな気がする……それがすげぇ怖い……」
Iさんは涙がこみ上げるのをなんとか堪えると、恐怖を怒りで誤魔化すように「ああ!!」と叫ぶや、Tさんの肩をつかんで無理やり走り出しました。
「置いていかないでよ!!」「ねぇ!!」と続いて叫びながら走り出す女性陣。
一同は来た道を全力で駆け戻り、ボロボロの控え室の窓をよじ登って外に出ました。
◆◆◆
あの夜以降、Iさんのみならずあの式場に足を運んだ全員が、怖くて自分の携帯の待ち受け画面を見ることができず、すぐに機種変更をしました。
その式場は2010年頃に取り壊され、今はもう跡形もないそうです。
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