世界を歩きながら、自分の輪郭を確かめてきたアーティストの與真司郎さん。彼が大切にしているのは、理由を並べることより、まず動くこと。知らない街を歩き、人に聞き、自分で決める――旅はその姿勢を、自然と教えてくれる。

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「忙しいから」「お金がないから」

 旅に行かない理由は、いくらでも思いつく。正直、僕自身もそうだった時期がある。けれど今は、はっきりと思う。動かなければ、何も始まらない、と。

 海外に行くと、僕はよく歩く。一日2万歩、2万5千歩はざらだ。タクシーやUberは極力使わず、出先からは歩いてホテルまで戻る。知らない街を、ただ歩く。その時間が、僕は好きだ。

お金の使い方にも変化が

 お金の使い方も、この数年で大きく変わった。きっかけの一つは、ビル・パーキンスの『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)だった。この本を読んで、お金の「貯め方」ではなく、「どう使い切るか」という視点を持つようになってから、旅との向き合い方も変わった。

 さらに影響を受けたのが、アメリカでの生活だ。周りの人たちは、驚くほど「未来の自分」にお金を使っていた。体調管理、スキンケア、運動、学び、経験。一瞬の贅沢ではなく、数年後、数十年後の自分がハッピーでいるための投資。それが当たり前の価値観としてあった。

 若い頃の僕は、今とは違った。ハイブランドの服やバッグを、そこまで欲しくもないのに無理して買っていた。それは働くためのモチベーションでもあり、同時に承認欲求の表れだったと思う。「これを持っていれば評価される」「自分には価値がある」と、どこかで証明したかった。

 今は、靴は5年以上、バッグも10年以上は使っている。その分、旅行や新しい経験、人との出会いには惜しまずお金を使う。今あるお金は、10年後の自分に投資するためのもの。そう考えるようになった。

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