CREA Traveller 2026 冬号は「北イタリア」特集。ミラノを拠点に、冬季五輪の舞台となる山岳リゾートのコルティナや白トリュフとワインの産地ピエモンテ、古き港街ジェノヴァ、ルネサンス期の芸術が凝縮するパドヴァ、マントヴァなど、物語のある街を巡っていく。

CREA Traveller 2026 冬号
ミラノと北イタリアの美しい町々
特別定価 1,650円
暮らしをデザインすることに長けているミラネーゼから家具選びのコツ、快適な住処のために大切にしていることを伺った。
時間をかけて、夫婦で納得のいく家具を選ぶ
インテリアのトップメゾンが多い街、ミラノに住む人にとって、“暮らしの中のデザイン”とはどんなものなのか。その美学を知るため、アルフレックス ジャパン ミラノオフィス責任者のルナ・ベッローリさんのご自宅にお邪魔させてもらった。
彼女が家族4人で住むアパートメントは、街の中心部に近い住宅地にあり、建物はミラノの建築家ルイジ・カッチャ・ドミニオーニが1970年代に手がけたもの。中庭を囲む造り、静寂に包まれた品格のある雰囲気に惹かれ、約15年前に引っ越してきた。
室内は螺旋階段が繋ぐ2フロアから成り、センスよくコーディネートされた1階のリビングに案内してくれた。伊ブランド、フロスの弧を描いたフロアライト「ARCO」やリーヴァの丸太のような椅子、アルフレックスの曲木が美しいチェアなど、一つひとつにキャラクターがありながら、不思議と統一感がある。
実家から受け継いだペルシャ絨毯が床に敷かれ、エキゾチックなニュアンスが差し色になっていた。コーディネートのコツを伺うと、「気に入ったものを探し続け、納得いくものしか部屋に置かないですね。夫と好みが違うので決まらないものもあって、ダイニングテーブル用の照明はまだ付いていないんです(笑)」。そう話すルナさんは、“明かり”が空間作りにとって大切な要素だと考えており、天井からの照明は用いず、間接照明で温かみのある雰囲気を作ることを意識していた。
夫婦ともに忙しいのでアイテム探しは難航しているが、毎年開催されるミラノサローネは家具リサーチにうってつけの場。通常だと予約が必要なショールームも気軽に行けるので夫婦で訪れたりしている。
もう一つ、家具選びで重要なのがソファだという。家の中でリラックスする場所のため、クオリティを大事にしたいのだ。「今使っているのは家具の本場、ブリアンツァの職人さんに作ってもらったものです。家具は何度も買い替えるものではないので、質が高く長く使えるものを選ぶというのがイタリア人の考えとしてありますね」
流暢な日本語で話すルナさんは、かつて京都や東京に住んでいた。日本での生活を経験し、住まいに対しての考え方に違いを感じたところは?
「日本はイタリアに比べて、家に人を招く機会が少ないと思いました。イタリアでは親戚や友人など、人が訪れて賑やかに過ごすことが多いんです。うちも、ここに引っ越してきた際、キッチンとリビングの仕切りをなくし、家族や友人たちといつでも会話ができるようにオープンな空間にリノベーションしました」と。
ついこの間も、息子さんの同級生たちが泊まりにきて、リビングのソファをベッドにし5人で夜を楽しく過ごしていたそう。
人が集まり、語らい合うリビングを家の中心にする。設える家具は、皆が居心地よく過ごせるように、体に馴染む快適さがあり、美しさを兼ね備えたものにしたい。“大切な人たちと過ごす時間こそが価値あるもの”という感性が、空間美にも息づいている。
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
CREA Traveller 2026年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。










