大晦日のドライブへ
「おお、いいねぇ~。車出してくれんの」
「おう、出す、出す。俺そんな飲んでないしいけるよ」
「ねぇ~、危ないってぇ~」
「そうだぞぉ~、大晦日に事故ったら間抜けだぞぉ~」
缶ビールを片手にくねくねと左右に揺れながら茶化すカップル。その肩を押し戻しながらTさんは言いました。
「少なくともこいつらには絶対運転させないから安心してくれ」
「えぇ~、ほんとに行くのぉ~? ドライブゥ~」
ぬるくなった缶ビールの残りをコクリと飲んで愚痴るMさん。
「年越し蕎麦も食わずにここでダベりながら年明かすのもなんか違うだろ」
「お、確かに年越し蕎麦は食いたいなぁ~」
ムードメーカーのKさんがにわかに乗り気になり始めたことで、徐々に突発ドライブ実現の空気が高まり、「寒いからいやだぁ」と駄々をこねるMさんをよそに、皆そろそろと上着を探し始めました。
バタン。
キンと冷えきった車に乗り込むと、おもむろにTさんがエンジンをかけてアイドリングを始めました。
「ドライブってどこ行くの?」
ハァ……白い息をこぼし、両手をこすっているMさん。
「どこでもいいよ。海とか?」










