「山のふもとに神社あったよな?」

 全員が慌てて時計を見ると、確かに夜中の0時を5分ほど過ぎていました。

「おーい、年越し蕎麦食い損ねたじゃねぇか」

「で、これからどうする? なんかお正月らしいことしたいよね」

「ねえ、初詣は?」

「初詣、いいじゃん」

「そういやKん家の方、山のふもとに神社あったよな?」

「あぁ、あるある。石の階段が長ぇとこ」

「じゃあ、そこ行こうよ。田舎の神社とか雰囲気あるんじゃない」

「まあ、あてもなく走るより正月気分味わえるだろ」

 そうして一行は、Kさんの地元にあるという小さな神社に向かうことになったのです。

「そうそう、あれだ、あれだ」

 見つけた入り口は生い茂る木の陰に隠れており、夜の田舎道の闇に溶け込んでいました。ヘッドライトで照らしながら近づくと、小さな小山の入り口にひっそりと灰色の鳥居、そしてそこから山頂に続く石階段があるのがわかったそうです。

 車を鳥居のそばに停めてエンジンを切って外に出ると、全身をキンと冷えた空気が包みました。

「予感はしていたけど、改めて正月を祝うような神社じゃないだろ、ここ」

「みんな分かってて言わないようにしてんの」

次のページ 古い石階段を見上げると……