北九州で書店員を務めるかたわら、2016年から実に10年間、生配信サービス「TwitCasting」で恐怖の実話怪談を語り続けてきた、ホラーチャンネル「禍話(まがばなし)」の語り手・かぁなっきさん。多くのホラー作家たちもファンを公言している同番組は、これまでにドラマ化や書籍化も果たすなど、令和のホラー界隈を牽引してきました。

 今回はそんな禍話から、名作として名高い「アイスの森」をご紹介します。大学の先輩と共に訪れたいわくつきのスポットで巻き起こる恐怖とは――。

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『立入禁止』『防犯カメラ作動中』

 フロントガラスの上でぶら下がる色あせた芳香剤。

 少し背の低いワンボックスのドアを開けると、甘ったるい匂いとどこか懐かしい車内の空気が流れ出してきました。TさんとYさんが後部座席に体を押し込んでいると、前部シートのポケットに無造作に詰め込まれた懐中電灯が目につきました。

「先輩、この懐中電灯まだ持ってたんすね~」

 以前、心霊スポットに行った時に買ってそのままになっていた懐中電灯。Tさんは先輩と遊んでいた日々が今日で最後なのを噛み締めていました。

 夜の駐車場に響く低いエンジン音。

 大学の敷地を抜けて薄暗い道を駆け抜けていく道中、窓の外に見えていたコンビニやアパートの明かりは、たちまち畑や木々の影に置き換わっていきました。

 車内に流れるローカルラジオ局の音楽を聴きながら昔話で盛り上がっていると、いつしか車は山道をぐるぐると登り始めていたそうです。

「お、多分アレかも……」

 O先輩がおもむろに車を山道の脇に停めると、ヘッドライトに照らされた先に「立入禁止」「防犯カメラ作動中」などと書かれた貼り紙、そして錆びた金網で仕切られた森の奥に続く山道の入り口が見えました。

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