その時、3人の耳に聞こえてきたのは…

「どうしたんすか?」

「先輩?」

「……これダメだわ。これヤバいわ……」

 先輩が照らしていた山道の先に目をやったTさんとYさん。その視線の先にはまた新たなアイスの棒がボコボコと群れを成して刺さっていました。

『どらいぶ』

『さんさいとり』

『きしゃ』

『かっぷる』

「これ…………」

 そのとき、山道の左奥の暗がりから見知らぬ声がぬるりと耳に滑り込んできたのです。

「あー、きもだめしか」

 めちゃくちゃに揺らめくライトの明かりと激しい呼吸音。

「うわぁぁぁああああ!!」

 3人は叫び声を上げながら、転びそうになるのも厭わずに全力疾走で山道を駆け下りたそうです。

 O先輩のワゴンに飛び乗り、Uターンをして山を降りて麓のコンビニに来るまで、誰も言葉を発しませんでした。

 上ずった声を抑えながらTさんが口火を切ると、皆一斉に抱えていた胸の内を吐き出したそうです。

 『嬉しそうな中年男性の声だった』、『ライトで一瞬照らしたはずなのに誰もいなかった』、『暗闇の中、音もなく俺たちのそばをつけていたのか?』、次々に吹き上がる疑問の答えが出るはずもなく、一同は青ざめたまま帰路に着いたそうです。

 O先輩の卒業後、後輩たちの間でTさんとYさんはアイスの森に行った勇者として注目を集めたそうですが、そこへの行き先や何を見たのかについて、2人は決して語ることはありませんでした。

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