メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は、ベアブリック(BE@RBRICK)とフランスのテキスタイル彫刻家、アン・ヴァレリー・デュポン(Anne-Valérie Dupond)のコラボコレクションの新作を発表した。表参道ヒルズ 西館 地下2階のメディコム・トイ プラスでは2025年12月14日(日)までの期間、同氏の新作展示会「Bestioles」を開催中。公式オンライン ストア MCT TOKYOでは同期間、ベアブリックの抽選販売を受け付け中。

 アンは、日常の中にある古着やヴィンテージのファブリックを手縫いで合わせ、動物や人物を再構築したテキスタイル彫刻を展開する。象徴的なのは、むき出しのステッチと歪なフォルムで、チャーミングでありながら不気味なムードが漂う。

 アンのユニークな世界観は、アンダーカバー(UNDERCOVER)やY’s、ケンゾー(KENZO)などとの協業によって日本でも知られることに。メディコム・トイとは、2019年よりコラボレーションを続けており、ハンドメイド作品「ONE OF KIND BE@RBRICK 1000%」 を100点近く発表した。アンは25年以上にわたって、アートとファッションをシームレスに横断した活躍を続けている。

 フランス語で「奇妙な生き物たち」を指す“Bestioles”を表題にした今回の展示では、アンの創作の原点である動物がモチーフのテキスタイル彫刻作品や「ONE OF KIND BE@RBRICK 1000%」、花や動物のブローチなど113点を展示している。そのほかライフスタイル雑貨などを展開する「MLE(MEDICOM TOY LIFE Entertainment)」から、Tシャツ(6,600円)やスウェットシャツ(13,200円)、トートバッグ(5,500円)、クッション(8,800円)、ブローチ(¥3,300)などのマーチも販売。会場は、ホリデームードに満ちた表参道にぴったりの幻想的な世界に仕上がった。

 今回は、展示のスタートに合わせて来日したアンに、ものづくりのこだわりやキャリアの歩みについて聞いた。

孤独だった少女に寄り添ったぬいぐるみ。創作の原点は「ホラーすぎた羊」

 はにかむ笑顔がチャーミングなアンは、現場にやわらかく温かい雰囲気をもたらしていた。「シャイで友達が少なく、ひとりぼっちだった」という幼少期、孤独に寄り添ったのは、絵やぬいぐるみだった。

「ぬいぐるみは私を安心させる存在で、いつも側にいたい気持ちがありました。パペットやファンタジーの作品にも夢中で、アメリカの人形劇『マペット(The Muppets)』や『ダーククリスタル(The Dark Crystal)』のほか、『ネバーエンディング・ストーリー(The NeverEnding Story)』を繰り返し観ていました」

 フランスの美術大学では、絵画を専攻した。ぬいぐるみを作り始めたきっかけは、出産を控えた友人に贈ろうと思ったこと。当時は裁縫もしたことがなかった。

「出来上がった羊のぬいぐるみはホラーのように怖すぎて、とても子供に贈るのに相応しいものではありませんでした(笑)。でも、私はその羊を心から気に入り、誇りに思いました。すぐに次の作品に取り掛かり、ぬいぐるみ作りにのめり込んでいきました」

 その後、パリのギャラリーから声がかかり、本格的に作家としての活動を始めた。当初から「できるだけ身近にある布を使うことがこだわり」だという。

「最初は、着なくなった自分の洋服を使って制作を始めました。今はアトリエに膨大な種類の布があります。それは、家族のお古やフリーマーケットで手に入れたもの、コスチュームデザイナーの友人からもらった残布までさまざま。ファッションブランドとの協業では、布をもらって制作しますが、余ればプロジェクトにも生かされます」

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