アスリートからアンバサダーへ、アシックスとともに広がる新しい挑戦
――アシックスのアンバサダーとしての活動を通して、ブランドに対するイメージに変化はありましたか?
はい、めっちゃ変わりました! 私、ブランドの方とお会いするときや自分で買い物をするときには、ウェブサイトをかなり読むんです。もちろん商品のデザインや機能性も見るんですけど、サステナビリティの欄をよくチェックしていて。アンバサダーに就任させていただくにあたり、アシックスの担当者の方と初めてお会いするときには、改めてウェブサイトをじっくり読み込みました。
そしたら、サステナビリティのページや毎年発行されている「サステナビリティレポート」があって、「こんなに取り組んでいたんだ!」と驚きました。アシックスって、実はずっと前から最先端で活動を続けているんですよね。
神戸から始まった日本のブランドが世界でもトップレベルでサステナビリティに取り組んでいるって、日本人として誇らしいし、うれしいこと。「アシックスを着る理由がまた一つ増えた」、そんな気持ちになりましたね。
アシックスという名前は「Anima Sana In Corpore Sano(健全な身体に健全な精神があれかし)」というラテン語の頭文字を取ったものだそうで、創業当時からその考えを大切にしてきたというのは、本当にすごいことだと思います。今でこそウェルビーイングや心身の健康という言葉が当たり前に使われますが、むしろ時代がアシックスの考え方に追いついたという感じで、かっこいいなと。
私のように、アスリートを引退してからアンバサダーに就任するのはめずらしいケースかもしれません。でも、それにも意味があると感じています。
競技者だった頃は、毎日プールやジムに通うのが当たり前で、運動がもたらしてくれるポジティブな影響にあまり気づけていませんでした。でも引退して初めて、運動しないと気分が晴れない、心がモヤモヤするということを実感して、そこから今の生活の中でどう運動を取り入れていくかを考えるようになりました。
競技者としての経験と引退後の生活の両方を知っている自分だからこそ、アンバサダーとして伝えられることがあるのではないかと思っています。
――アンバサダーの活動を通して、今後挑戦してみたいことや、人々に伝えていきたいことはありますか?
私が子どもの頃は、「パラリンピックに出るのが夢だ」と言っても、周りの人に「パラリンピックって何?」と聞かれる時代でした。だからまずは、パラリンピックをもっと有名にしたいという思いがあり、そのためには結果を残すのが一番だと考えて努力を積み重ねてきたんです。実際、日本代表としてパラリンピックに出場し、日本記録を更新するなど結果を残すことで、その思いを形にしてきました。
そして引退した今、アシックスの方々とご一緒できることは、私にとって本当に特別なことなんです。たとえばブランドのサイトを見ても、手足が揃ったモデルばかりですよね。でも、そこに私のような人や義足を付けた人など、さまざまな背景を持つ人が登場することには大きな意味があり、社会にインパクトを与えられると思うんです。
だからこそ、アスリートとしてだけでなく、モデルや俳優としての活動を通じて、これからもスポットライトを浴びる場に積極的に出ていきたいと思っています。
――最後に、CREA読者に向けて“日常で心と体をポジティブにするヒント”をお願いします。
セルフケアに対して、「自分ばかり優先して、自己中心的になっていないだろうか」とためらいを感じる人もいるかもしれません。でも私の実体験から言えるのは、セルフケアこそ最優先にすべきということです。
自分をきちんとケアできると、目の前の人も自然とケアできるようになります。そして、自分の良いところもあまり好きになれないところも、「そのままでいい」と受け入れられると、ほかの人に対してもジャッジメントなく向き合えるようになります。
なかなか優先順位を上げられないという人もいるかもしれませんが、ぜひ胸を張って最優先にしてみてほしいと思います。セルフケアは決して自分のためだけのものではなく、周りの人を大切にすることにもつながっていくからです。
まずは、15分9秒の運動から始めてみてください。朝のストレッチやウォーキングなど、短い時間でも自分に心地よさを与えることで、1日を良い気分で始めることができます。そして、そのポジティブなエネルギーが周りにも伝わり、良い循環となって広がっていくはずです。
一ノ瀬メイ
京都市生まれ。先天性右前腕欠損症。1歳半で水泳を始め、13歳で史上最年少としてアジアパラ競技大会に出場。2016年リオデジャネイロパラリンピックでは、日本人女子最多となる8種目に出場。2020年に世界ランキング1位を獲得し、翌年に現役を引退。その後は、モデルやタレントとして活動の幅を広げ、スピーカーとしてTEDxにも登壇。2025年には俳優デビューを果たし、Septimius Awardにて最優秀アジア女優賞にノミネートされるなど、多方面で活躍を見せている。アシックスのブランドアンバサダー、ASICS Foundation理事。
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