ジャーナリストに台本はない

 上戸 実際のニュース番組のキャスターさんを示されたので役作りもしやすかったのですが、ちょうど公開する頃、現実のニュース番組で謝罪するキャスターの方を目にする機会があって。その姿と市谷が重なりました。

 第2作では、生放送中に自分の意思で突っ走った責任感が、自分の足で取材に行き、自分の目で見て正確な情報を届けようというフリージャーナリストへの転身に繋がっています。演じていて素敵な女性だなと感じます。

 有働 キャスター役というと私もイメージが湧くのですけど。ジャーナリスト役はどうですか、難しい?

 上戸 そうですね。有働さんは、どちらの立ち位置でカメラの前に座っていますか?

 有働 使い分けですね。「私の意思とは関係なくニュースを読んでいます」というのもわざとやるし。

 上戸 あえてそこを見えるようにすることもあるんですね。

 有働 はい。一方で自ら取材に行った時は、完全に自分しか知らないことだから自分の言葉で伝えます。

 上戸 台本はないんですか?

 有働 ないです。こういう取材をしようという方向性程度は書くことがありますけど。ニュースキャスターの時は自分でもテレビで確認できますが、本気で取材している時ってカメラが回っていないことも多いし、どういう姿なのかわからないです。

 上戸 たしかに。今回の市谷は、常に化粧もせずボサボサの髪で取材に走り回っています。

 あと、この撮影で初めて、想像でお芝居をする経験もしました。海の上をヘリで飛んで行くというシーンがあり、そこでCGを使ったんです。青色のスクリーンの前で、スタッフが持つ長い棒の先を見てくださいと言われて皆で芝居を合わせたのですが、出来上がりのCGを見て感動しました。思い描いた映像との温度差を感じなかったから、嬉しかったですね。

※この対談の全文(約8300字)は「文藝春秋」2025年10月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(上戸彩×有働由美子「母になって、自分の母のすごさを実感します」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・「この一文で泣いてほしい」
・周りが羨ましかった10代
・旦那さんが「続けてほしい」
・ママがテレビに映ってる!
・家で待っていてくれた母
・癒やされるベッキーの手料理

2025.10.07(火)
文=上戸 彩、有働由美子