この記事の連載

温泉学と腸活ワークショップでウェルネススキルを学ぶ

 「七日一巡り」が打ち出しているのは、湯治リトリートである。温泉に浸かったり、運動メニューをこなしたりしながら、「日常生活で抱え込んだ過剰なものを手放して、ゼロリセットし、体も心も充電していただけたら……。自分らしい、心地いいリズムに戻っていってもらいたい」と、「七日一巡り」のマネージャー、太田ふたばさんは言う。

 たとえば、「食」では「腸活ワークショップ」、「運動」なら「自力整体」「湯けむり街歩き」といったプログラムが用意されている。この宿は体験が肝だから、興味のあるプログラムに目星をつけ、それに合わせて宿泊日を決めていくといいかもしれない。

 「温泉学講座」では、温泉法における温泉の定義や泉質名、温泉分析表の見方などをレクチャーしてくれるので、湯治や温泉のいろはから、温泉の入り方までをコンパクトに学べる。そして、別府ならではの楽しみ、地元の温泉=ジモ泉の解説も。

 たとえば、初心者がやりがちな浴槽の縁に座る行為については、「地元の人たちは縁に頭をのせるから、お尻はのせないで」と、ジモ泉を利用するにあたってのよそ者の心得を伝授してくれた。

 湯治宿なので食事の提供はない。用意されているキッチンで、自分で料理を作るスタイルをとっている。食材は持参してもいいし、地元のスーパーに買い出しに行ってもいい。冷蔵庫には手作りの調味料があり、自由に使える調理器具や食器類が完備されている。

 腸美活ライフスタイルマスターの菊地あゆみさんによる「塩麹つくり」と「発酵万能ニラたれつくり」のワークショップに参加し、季節に合わせた食養生を学んだ。

「私たちも自然のめぐりのひとつ。いつまでも暑いからと冷たいビールばかり飲んでいては免疫力が落ちます。立秋は秋の養生を始める頃。秋は肺がカサカサと乾燥するので、白菜や大根、長芋などの白い食材を取り入れましょう」(菊地さん)

 四季に合わせた食のワンポイントを教えてもらいながら、発酵調味料作りを学ぶ。菊地さん自身も、腸の不調からくるアレルギーや頭痛を克服した経験を持っているから、説得力もひとしおだ。

 「腸は免疫の要です。さらに脳と腸はお互いに影響を与え、幸せホルモンのセロトニンの90%が腸で作られるんですよ」と菊地さん。

 腸にいい食品ということで、「七日一巡り」のキッチンには発酵調味料や梅干し、調味料に漬けた漬物、自家製味噌、味噌汁の素などが入っていて、宿泊者は自由に使うことができる。湯治をしながら、暮らしの知恵を冷蔵庫の中身から学ぶこともできそうだ。

 40~50代の女性の多くが悩む更年期の症状も腸の状態と関係があるそうで、菊池さんいわく「心が落ち着く行動を増やすことで、副交感神経が優位になる」とか。お風呂やウォーキング、マッサージ、睡眠、食事など自分にご褒美をたっぷり与えることで、幸せホルモンの分泌が促され、感情のコントロールもうまくできるようになるようだ。

2025.10.05(日)
文・撮影=野添ちかこ