「ナニソレ」としか言いようのない話

――そもそも怪談系YouTubeチャンネルを始めたきっかけは?
僕が「ホラーファーザー」と呼んでいる、先輩芸人の好井まさおさんです。吉本興業の怪談ライブでご一緒したのをきっかけに、好井さんのYouTubeチャンネル(好井まさおの怪談を浴びる会)に呼んでいただくようになり、「西田の怪談をもっとたくさん聞きたいっていう人は増えているから、自分のチャンネルを持ったほうがいい」とすすめてくれました。
――2024年1月の開設から2年足らずで、フォロワー10万人超(2025年9月現在)という人気ぶり。好井さんの目は確かでしたね。実話怪談だけでなく、オカルト、都市伝説のほか、謎で不思議なエピソード――好井さんが言うところの“ナニソレ”系の話も味わい深いです。
ガチな怪談も好きですが、本当に「ナニソレ」としか言いようのない話も大好きなんです。怪談の場合、霊現象の背景とか、人や場所にまつわる因縁めいたことが語られたりもしますが、ナニソレの場合は、ポン。と現象だけを目の前に差し出される感じで。しかもそれが、他で聞いたことのない唯一無二の話だったりするんです。

――聞かされた方も一瞬、ポカーンとしてしまうような。
それも含めて好きなんですよ。だからこそ想像を掻き立てられるし、みんなでああだこうだ言う楽しみがある。「気にしすぎ」とか「全然怖くない」みたいなコメントもありますが、それも受け入れています。否定的なコメントを排除し始めると、チャンネルの方向性がどんどん尖っていくようで、イヤなんです。
僕のスタンスは、どんなジャンルの話であれ、それが語り手の思い込みだったとしても、「まずは信じて聞いてみる」。同様に、否定的なコメントに対しても「そういう考え方もあるよね」と受け止める。僕自身、22歳で初の霊体験を食らうまでは、そうした現象について半信半疑なところがありましたから。
最近思うのは、霊の世界も僕らの世界とそう変わらないんじゃないかということです。優しい霊、めっちゃヤバい霊、面白い霊⋯⋯いろいろなタイプの霊がいるんだろうなと思いますね。

――見た目的にも、生きている人と見分けがつかないことがあるようですね。
僕の経験では、そうですね。最初に住んだマンション(会社の寮)で玄関のドアスコープから見た男性も、東日本大震災の翌日にアルバイト先のレストランに現れたおばあさんも、その時点では完全に生きた人間だと思っていましたから。
2025.09.30(火)
文=伊藤由起
写真=佐藤 亘