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 芸人、俳優、怪談師、YouTuberなど、多彩な顔を持つ好井まさおさんが、自身のYouTubeチャンネルと同名の著書『好井まさおの怪談を浴びる会』(KADOKAWA)を上梓した。

 面白いのは、単に配信した怪談を書き起こしているのではく、芸人・好井まさおの類まれなる話芸をもって新たに“語り起こされて”いるところだ。

 “怪談系”屈指のフォロワー数・再生回数を誇るチャンネルから誕生した、初の著書について好井まさおさんにお話を聞いた。


現時点でのベスト・オブ・ベスト怪談を収録

――初書籍が発売されましたが、今の心境はいかがですか?

 つい最近までは、自分の本を出すことなんて一生ないだろうと思っていたんですけどね。親しくさせていただいている先輩のピース又吉(直樹)さんから小説の制作過程を聞いたりすることもあるんですが、オレそんなん絶対でけへんわって。

――比較対象が芥川賞作家。

 でも、実際書いてみたら「あ、楽し!」ってなりました。何度も原稿を書き直したりする作業も含めて楽しかった。何も考えず収録したい怪談を書き殴っていたら400ページ分くらいになってしまい、編集の方に半分に減らして欲しいと言われて白目になりましたけど。結果的には、現時点でのベスト版みたいな一冊になって満足です。

――執筆の際、特に意識したことはありますか。

 先ほどの話ともつながるのですが、動画やテレビでは話せなかった怪異の前触れや後日談、一見無駄に見えるディテールも入れるよう心がけました。無駄が出汁になって怖さが増すこともあるし、些細なことがあとになって前フリだったと気づく衝撃もある。時系列に合わせてつづったほうが怖い話もあれば、無視したほうがいい話もある。

 そういう意味で、書籍って便利やなと思いましたね。ページをめくるだけで何度も読み返すことができるから、書くほうの自由度も高い。初めましての方はもちろん、YouTubeの視聴者さんにもまた違った感じで楽しんでもらいたいです。

2025.03.27(木)
文=伊藤由起
写真=榎本麻美