この記事の連載
僕の声で脳内再生されるような文体に

――本文は、基本的に好井さんのひとり語りですね。好井さんの体験談はもちろん、YouTubeのゲストや視聴者から寄せられた話も。
一度は別のスタイルも試したんですよ。例えば、「これはガンバレルーヤのまひるが体験した話です」として、体験談の部分はまひるの口調で書く。でも、気持ち悪くて無理でした。「僕が聞いた話を読者のみなさんにしゃべっている」というスタイルで統一されていないと読みづらい。
終始、僕の声で脳内再生されるような文体にしようというのが、いちばん意識した部分だったかもしれないです。
――まさに、好井さんの語りに翻弄される読書体験でした。YouTube未公開の新作や、今、お名前の出たガンバレルーヤのお二人が住んだ「大阪にある心霊マンション」の話に新たな取材内容を加えた<完全版>も読み応えがありますね。
動画で出せばかなりの再生数が期待できる話も、あえて書籍限定にすることでこの一冊にかける熱量を示したかったんです。さらっと書いたわけじゃなく、全集中したと言い切れるくらい向き合ったんで。
――さぞかし時間もかかったのでは。
いや、そうでもないです(笑)。編集さんとの打ち合わせの2日くらい前に、喫茶店にこもって集中して書く、みたいなことを繰り返していたら、いつの間にかできていた。文章的に荒い部分は編集さんが直してくれるやろと思って丸投げしたら、思っていたよりもそのまま採用されていて逆に焦りましたけど。
イメージしたのは、僕と編集さん、読者の方の3人でラフに喋っているような空気感。僕は年に2、3冊しか本を読みませんが、そんな人でも気軽に手にとってもらえるような本にしたかった。YouTubeの動画も、怪談マニアだけでなく、僕やゲストをきっかけに怪談に興味を持ったような人も見やすいようにつくっているつもりです。
2025.03.27(木)
文=伊藤由起
写真=榎本麻美