どんなときも「自分らしさ」全開でいたい

――今作は、アスリートの厳しい世界を描きながらも、トガシが「限定のイワコロパン」に振り回される姿にかわいらしさが垣間見えました。松坂さんにとっての好物や「ご褒美フード」はありますか?
大型スーパーで売っている真空パックのヒレステーキです。きっと人気なんでしょうね。すぐに売れてしまうので、見つけたら即買いです。密封されて鮮度が保たれているせいか、焼くだけでお店のような味になる。素人の僕が焼いても、特別なステーキになるのでおすすめです。

あとは、とあるお店のアイスコーヒーです。妻が地元の方に教えていただいて、一緒に行ってハマりました。僕は世界一だと思っています。苦味も酸味もあって、ものすごく奥行きのある味でありつつ、飲みやすいんです。
ただ、頻繁には行けない場所で、近くに行った時には絶対に立ち寄るようにしています。行ったら必ず飲みたい、飲まずにはいられない味です。世界中のバリスタが通うくらいのお店みたいです。
――大切にしたい特別なお店なんですね。ちなみにコーヒーは、ご自宅でも飲まれているんですか?
家では豆を挽いて淹れています。テレビで紹介されていた豆をネットで取り寄せたりもして。ただ最近ミルが壊れてしまって新しいのを買わないと……。

仕事のある日は、撮影するシーンを確認して、必ずコーヒーを飲んでから行きます。コーヒーがオンとオフのスイッチみたいなものかもしれません。遅くまでの撮影も多いので、頑張らなきゃと気合を入れるときにも必要です。カフェインの摂りすぎには気をつけないととは思っているんですが。
――なるほど。コーヒーを淹れて飲むのがルーティンみたいなものでしょうか。ほかにもルーティンはありますか?
子どもが生まれてから、生活がすっかり朝型になりました。仕事がない日でも5時半に起きて、子どもの世話をしながら、掃除、買い物、ご飯作りと家のことをやっているとそれで1日があっという間に終わります。

夜、子どもがなかなか寝てくれない時期があって、お昼寝をやめてみたらスッと寝てくれるようになったんです。ただ、お昼寝を抜くのは大変。眠くてぐずらないよう、いかに別のことに夢中にさせるか考えましたね。
――仕事も忙しく、プライベートも充実されていると思うのですが、どういうときに自分らしさを感じますか? トガシ自身、葛藤したり迷ったりしながら、自分らしい走りを模索していましたが。
仕事をしている自分、家族といる自分、一人でいる自分。多分それぞれ違う面が出ていると思うんですが、やっぱりどれも自分なんだろうなと思います。特に最近そう思うようになりました。

表現をしたり、話をしたり、家族とコミュニケーションをとったりというのは、どれも自分のフィルターを通してしているから。家にいるからリラックスしているわけじゃなく、家族といるときも、仕事相手と対面しているときも、等しく自分らしさ全開なんじゃないかな。どんな状況でも、自分らしくありたいし、あり続けられたらいいな、と思っています。
松坂桃李(まつざか・とおり)
1988年、神奈川県生まれ。2009年に俳優としてデビュー。『孤狼の血』で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。さらに『孤狼の血 LEVEL2』、『流浪の月』で第45回と第46回の日本アカデミー賞優秀主演男優賞をそれぞれ受賞。近年の主な出演作にドラマ『御上先生』や、映画『父と僕の終わらない歌』、『パディントン 消えた黄金郷の秘密』※声の出演、『フロントライン』がある。また、2027年のNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』で主演を務める。
劇場アニメ『ひゃくえむ。』

監督:岩井澤健治
原作:魚豊『ひゃくえむ。』(講談社「マガジンポケット」所載)
出演:松坂桃李、染谷将太/笠間淳、高橋李依、田中有紀/種﨑敦美、悠木碧/内田雄馬、内山昂輝、津田健次郎
配給:ポニーキャニオン/アスミック・エース
©魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会
2025年9月19日(金) 全国公開
公式サイト https://hyakuemu-anime.com/

2025.09.18(木)
文=晴山香織
撮影=平松市聖
ヘアメイク=AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
スタイリスト=猪塚慶太