この記事の連載
テレビマンって呼ばないで#1 小山テリハ
テレビマンって呼ばないで#2 工藤里紗
テレビマンって呼ばないで#3 北口富紀子
テレビマンって呼ばないで#4 松本京子
テレビマンって呼ばないで#5 青野華生子
テレビマンって呼ばないで#6 二木佑香
テレビマンって呼ばないで#7 本間かなみ
テレビマンって呼ばないで#8 祖父江里奈
テレビマンって呼ばないで#9 岡部知穂 前篇
テレビマンって呼ばないで#10 岡部知穂 後篇
テレビマンって呼ばないで#11 津田 環 前篇
テレビマンって呼ばないで#12 津田 環 後篇
テレビマンって呼ばないで#13 片岡明日香 前篇
テレビマンって呼ばないで#14 片岡明日香 後篇
テレビマンって呼ばないで#15 前川瞳美 前篇
テレビマンって呼ばないで#16 前川瞳美 後篇
テレビマンって呼ばないで#17 児玉裕佳 前篇
テレビマンって呼ばないで#18 児玉裕佳 後篇
「女の人ってマメだよね」…あえてしてきた“意思表明”
――そういう環境ゆえのやりづらさや苦労はあったでしょうか。たとえば、なめられないように肩肘張らざるを得なかったり、“女性ならでは”の企画を求められて困ったりといったような。
上の世代の人に話を聞くと、やっぱりまだハラスメントもあった時代ですごくしんどかっただろうなと感じます。私が働き出してからは、それこそ時代的な変化もあるのか、そのあたりの空気感はだいぶ違いますね。
ただ、仕事の内容に関してはちょっと意識しているところがあります。『M‐1』でいうと、密着Dを経て、プロデューサー業務もやったことがあって。やっぱりプロデューサーはいろんなことをマメに管理しないといけないんですよ。よくある話として、女性はマメやったり細かい作業が得意やったりする人が多いと言われるじゃないですか。私自身もわりと得意というか好きなほうなんですけど、それだけが“やりたいこと”ではないんですよね。
「女の人ってマメだよね」「児玉ちゃんは、言ったらちゃんとやってくれるよね」と言われたり褒められたりすることもあるし、それだけやっていてもお給料はもらえるけど、自分の表現にはなっていない。だから企画書を一生懸命出したり、自分のやりたいことを周りに言い続けたりしてきました。そういう意思表明は若手の中でも結構してきたほうかもしれないです。

――前回登場いただいた日本テレビの前川さんも「“女性はケア業務が向いている”という刷り込みから、若い女性スタッフ自身もディレクターではなくAPやプロデューサーになるものだと思ってしまっていて、寂しく感じる」とおっしゃっていました。すごく近い話ですね。
まさにそうやと思います。私自身は、そうやって言い続けたからか、『M‐1』だと一度はプロデューサーをやったにもかかわらず去年はまたディレクターに戻って敗者復活戦の演出をやらせてもらえました。PからDに戻るのはわりと珍しいんです。もちろんある程度形が決まっている番組ではあるけれど、この3時間半をどういう戦いにするか考える仕事ができて、うれしかったですね。
実はこれから産休に入るんですけど、戻ってきてからも、自分にしかできないアイデアを形にしていく仕事はずっとやっていきたいなと思ってます。
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児玉裕佳
朝日放送テレビ コンテンツプロデュース局制作部 ディレクター・プロデューサー。関西学院大学社会学部卒業。2016年朝日放送テレビ入社。テレビ営業外勤を経て、現在は『やすとものいたって真剣です』『ABCお笑いグランプリ』『M-1グランプリ』など担当。『イケメン乙』『つまずく夜は』『石井ダンサーズのパーフェクトワールド』『濱田祐太郎のブラリモウドク』企画演出。
濱田祐太郎のブラリモウドク(朝日放送)
2025年9月14日(日)よる11時30分~放送

Column
テレビマンって呼ばないで
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。
2025.09.14(日)
文=斎藤 岬