この記事の連載

「耳いいんですね」に絶妙すぎる返答…濱田さんの“間合い”

――実際にご一緒されてみて、発見や驚きはありましたか?

 濱田さんは、間合いがすごいです。目が見えてる私たちは相手とアイコンタクトしながら間(ま)を図ってしゃべっていますが、見えていないとそれがないわけですよね。それなのに、間合いの取り方が抜群にうまくて。

 ロケ中の話の流れで、ゲストの翠星チークダンス・ちろるさんが「じゃあ濱田さん、めっちゃ耳いいんですね」と言ったとき、濱田さんが絶妙な間で「え? なんて?」って聞き返したんですよ(笑)。その速度でその間でその笑いで返せるって、エグい力やなと思いました。

――以前『ブラリモウドク』について濱田さんにインタビューしたとき、「収録していて、やりづらいと感じる場面は特になかった」とおっしゃっていました。制作サイドとしては「こういう部分で工夫が必要なんだ」という場面はあったのでしょうか。

 普段なんの気なしにやっていることに対して「そうか、これだと濱田さんは困るんや」と気付かされる場面は結構ありました。たとえば、『ブラリモウドク』では濱田さんにナレーションもやってもらったんですが、普段のナレーション収録だとナレーターさんがブースに入って、ディレクターは別室で待機してるんです。VTRを流しながら、ディレクターがキューボタンを押すとナレーターの手元のボタンが光って、それを合図に読み始める。でも濱田さんにはその光が届かないんですよね。なので、私もブースに入って隣で映像を見て、ボタンを押す代わりに肩をポンと叩くやり方にしてみました。

 ただ、これは事前に気づいて対応できましたし、一緒に作っていてこちらが困ることは特になかったです。むしろ固定観念を外される感覚があって、そこも面白かったですね。

――この連載では、女性がテレビの世界でどう働くかについてうかがっています。バラエティやお笑いは長年にわたって男性が制作の中心になっていたと思いますが、児玉さんが入社された時期もそういう状況はありましたか?

 言われてみればたしかに、私が入社したときは男性中心の感じはありましたね。5年目で異動したときも、制作部は部長だけが女性で、その下は私まで一気に年次が飛んでいて、ディレクターのポジションには女性がいなかったです。

2025.09.14(日)
文=斎藤 岬