時ならぬブームの背景

 現在のブームの中心にいるのは大人の女性である。少子化、玩具の低年齢化を補って余りある女性の熱狂が転じて、子供時代にシルバニアファミリーに親しんだママやばあばへの喚起となり、更に転じて子や孫へのプレゼントとして再び選ばれるようになっている。この相乗がブームのWエンジンだ。

 「新型ウイルス以降、盛り上がりが顕著になりました。外出規制、リモートワークなどによっておうち時間が増えたことが追い風です。動画サブスクやSNSでシルバニアファミリーを目にして『懐かしい!』『かわいい!』と感じる人が多くいて、子供の頃のシルバニアファミリーを見つけてSNSにアップしてみたり、何十年ぶりに買ってみたり。また赤ちゃんフィギュアをお守り代わりに身に着ける、推し活を楽しむようにアクセサリーにする人も少なくありません。」と、同社広報宣伝課の鈴木晴子さんは言う。

 大人のコレクション魂に火を灯す商品力の高さ、種類の豊富さは言わずもがな。現在までの総生産数はフィギュアで約2億体、家や家具などで3000万個、世界80の国と地域で販売されている。中でも日本発売の翌年から販売を続けるのがイギリスだ。現地代理店スタッフが「ドールハウス遊びが一般的なイギリスでこれは売れる!」と販売を決断したのだとか。

海外からも得た新たな気づき

 きっかけとは何か? それは海外からの声だった。店頭で商品ディスプレイを見た消費者から「ママがエプロンを着けて掃除機をかけているのに、パパはソファに座ってテレビを観ている役割分担はなぜか?」と問われたのだ。いわゆるマインドチェンジの進む海外の人々にとって、それがたとえ動物であってもロールプレイであり、子供たちの将来の刷り込みにつながってはならない。

 日本ではまだまだそのような認識の広まる前だったが、エポック社では方針を一新。先の家事分担もそうだし、たとえば男の子は青っぽい服、女の子はピンクといった“あたりまえ”を無意識に使うことをしない。皆さんが店頭でシルバニアファミリーを見る時、こういった点を踏まえると新たな気づきを得られるかも知れない。

 海外でマーケットの大きい国は北米、欧州となるが、直近で人気急上昇な国と言えば、スペインとメキシコが挙げられる。もともとメキシコでは展開していたが、新型ウイルス下で人気が再燃。SNSを通じて同じ言語のスペインへ飛び火したということらしい。

2025.04.26(土)
文=前田賢紀
写真=榎本麻美
写真提供=エポック社