TVゲーム旋風の中で生まれたシルバニアファミリー

 シルバニアファミリーの発売は1985年3月20日。当時玩具業界は激変のさなかにあった。というのも任天堂の携帯電子ゲーム「ゲームウオッチ」、続くTVゲーム「ファミリーコンピュータ」や「セガ」によって、玩具の勢力図が転換したからだ。70年代はおおむね、小学校卒業頃まで玩具で遊ぶのが一般的だったが、これら電子/TVゲームの登場によって、より低年齢で玩具を卒業してしまう事態が起きていたのだ。

 エポック社とて電子/TVゲームを手掛けてそれなりに成功を収めていたものの、任天堂、セガの背中はますます遠く……。そんな状況下において検討されたのが、男の子向け玩具を得意としていたエポック社にとっての新たな一手、女の子向け玩具の開発だった。そしてリサーチを続ける中で出会ったのが、欧州の伝統玩具であるドールハウスの精巧さと美しさだった。

 テーマは「自然、家族、愛」と普遍性あるものとされ、人形ではなく動物家族だったのは、世代、年代を問わずに愛される、やはり普遍的、中立的な存在だったためだ。ちなみに当初設定されたサイズ感、顔つきなどは現在にいたるまで不変にして普遍。シルバニアファミリーは当初から完成されていたともいえる。

 「9家族でスタートしたシルバニアファミリーに当初セット商品はなく、フィギュア、家、家具などを個別に選ぶ「構成玩具」でした。つまり自分の発想でシルバニア村世界をつくるロールプレイトイ。さらに特長的なのが、日本ではつい2020年頃まで名前をもたなかったことです」とは、エポック社マーケティング本部のゼネラルマネージャー、小野百合子さんだ。

 現在では主人公「フレア」を中心にそれぞれ名前をもっているが、命名のきっかけのひとつは、動画コンテンツ製作にあたり、固有名詞をもたないことが会話に不便を生じたためだ。

2025.04.26(土)
文=前田賢紀
写真=榎本麻美
写真提供=エポック社