シャネル・ネクサス・ホールが20周年を迎えるにあたり昨年スタートさせた新たなプログラムが、今年はさらにパワーアップする。2025年最初の展覧会では、写真を主なメディアとして創作活動を行うアジアのアーティストにフォーカスしたシリーズの第二弾。昨年の中国に続き今年はインド出身のアーティスト、プシュパマラ N (Pushpamala N)を「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」にて紹介する。

プシュパマラ Nは、インドのバンガロール(現ベンガルール)を拠点に活動するアーティスト。もともと彫刻家として開始した創作活動は写真や映画へと移行し、1990年代半ばから自らがさまざまな役柄に扮して、示唆に富んだ物語を作り上げるフォト・パフォーマンスや、ステージド・フォトの創作を始める。その作品は女性像の構築や国家の枠組みを探求するもので、美術史、アーカイブ資料、大衆文化から引き出された象徴的なイメージや原型を丹念に再現している。
制作は基本的に共同作業で行われ、作家が共鳴する既成のイメージを特定し、自身のスタジオで再現。友人や素人のキャスト、技術者へ指示をし、細部まで計算されたシーンを作り上げる。ハイテクなデジタル加工とは対照的に、プシュパマラのアナログで演劇のように構成された演出は、その作為的なものをあえて強調させ、これにより作品の根底にある概念的な枠組みに意識を向けさせている。視覚的言語を通して文化的・国家的記憶がどのように形成されるか鋭く考察しており、こうした 歴史的・文化的な背景を持つイメージをあえて再現することで、その成り立ちを浮き彫りにし、観る者に「真実とは何か」を問いかけている。
また、関連企画として、シャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座)でも6月に個展が予定されている。
■プシュパマラ N (Pushpamala N)
1956年生まれ。インドのバンガロールを拠点に多様な分野で活動するアーティスト。彫刻家として活動を開始し、1990年代半ばからさまざまな役柄に扮して示唆に富んだ物語を作り上げるフォト・パフォーマンスやステージド・フォトの創作を始める。その作品は、女性像の構築や国民国家の枠組みといったテーマに取り組んでいる。「現代インド美術界で最もエンターテイ二ングなイコノクラスト」と評され、自らをフレームに登場させ社会問題の中心に位置づけている。そして、創造者であると同時に歴史の産物としてのアーティストの役割を探求している。

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2025.04.11(金)
文=CREA編集部