野菜作りに酪農、漁業。ピチピチ素材ならお任せあれ。土地のパワーがギュッと詰まった極上の一皿に出会う旅。
北海道フレンチを知り尽くす食のジャーナリスト、齋藤壽さんが日本で最もフランス料理が盛り上がりをみせるこの地で、厳選店をご案内。
» 第1回 札幌が世界に誇るミシュラン3ツ星店 「レストラン・モリエール」
» 第2回 フランスで噂の腕利きが函館に開いた 「ロワゾー パー マツナガ」
bi.blé (レストラン ビブレ) [美瑛]
3ツ星「レストラン・モリエール」がパンを主役にした新店をオープン。
朝、昼、夜とガストロノミー最前線のフレンチが食べられるわずか5室のツインルームは
早くも予約困難になりそうな予感!
“素朴で、しみじみおいしいパンと大自然の料理”―― 齋藤
右:朝食の贅沢、搾りたてのオレンジジュースと搾りたての牛乳。産地ならではのフレッシュなドリンクを飲めば、目覚めよし。
青々とした小麦畑が続く美瑛の丘に、4月22日、ブレイク必至の一軒がオープンした。「レストラン・モリエール」の中道博さん、同店の支店で札幌で23年間盛況だった「ル・プレヴェール」を閉め、馳せ参じた鈴木俊之シェフ、さらに齋藤さんもプロデューサーとして参加する「bi.blé」だ。
モリエールグループとしては羊蹄山の麓、真狩村で人気を博す「レストラン・マッカリーナ」に続く2軒目の宿泊施設付きレストランだが、今回の新店にはブーランジェリーが併設される。この店の主役は石臼で小麦を挽き、石窯で焼くパンだ。もちろん、小麦の一大産地である美瑛という土地柄を意識してのことである。
右:フランスから直輸入した石窯でしっかり焼き切ったクロワッサン。歯触り、サクサク!
「料理人としての中道さんの一つの集大成」と齋藤さんは言う。中道さんの胸にあるのは映画『バベットの晩餐会』に描かれているような、食事を通して人々の心がひとつになるような場を作りたいという思いだ。そんな思いを彼は「eat together」と表現し、シェアスタイルで料理を供する。
朝昼晩に焼きたてのパンを分け合い、ランチではデンマークの伝統料理「スモーブロー」からヒントを得た前菜の盛り合わせをシェア。近隣の農家で採れたみずみずしい葉野菜やフォアグラのパテなどをパンと一緒に。ディナーの肉料理ではドーンと塊で火を入れて、ギャルソンが目の前で切り分けるショウアップ式のサービスも。
また、できたてに命をかける“中道イズム”も健在。朝はモウモウと湯気を上げるゆでたてのアスパラ、昼もジージーとまだ音を立てている揚げたてのふきのとうが各自のお皿にサーブされる。
一つ一つの料理に斬新さはないかもしれない。だが、地元の生産者と協力し、土地の素材と真摯に向き合い、分かち合う精神を表現するスタイルは華やかさに目が行きがちなガストロノミーの世界にあって新鮮に映る。
熱々の料理に胸が躍り、一食を分け合ってじんわり心が温まる。そんな美食の原点を感じられる場所だ。
bi.blé (レストラン ビブレ)
所在地 北海道上川郡美瑛町字北瑛第2 北瑛小麦の丘(旧北瑛小学校)
電話番号 0166-92-8100
営業時間 11:00~15:00ラストオーダー、17:30~19:30ラストオーダー
定休日 火曜日(7~8月は無休)
席数 テーブル44、個室あり
予約 可(9,500円のディナーコースは要予約)
カード 可
予算 ランチ2,600円~、ディナー7,400円~、ボトルワイン7,000円~(料理はコースのみ)
【宿泊】
部屋 ツインルーム5室
チェックイン 15:00
チェックアウト 11:00
定休日 月曜日、火曜日
予算 23,700円~(1人あたり、朝・夕食付き)。(各税込)
ブーランジェリーは10:00~営業。
齋藤壽 (さいとうひさし)
食のジャーナリスト&コンサルタント。北海道出身。『専門料理』編集長を経て、『料理通信』編集顧問、「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」料理顧問、今春開塾した「美瑛料理塾」塾頭も務める。
2014.05.24(土)
文=寺尾妙子
撮影=石井宏明