サンダカン再訪で10年ぶりの恋人に会える?

東南アジア最高峰のキナバル山頂。ボルネオ島の玄関口、コタキナバルからサンダカンへ飛ぶときに、行きは左、帰りは右の窓側を指定すれば、いつもは雲で隠れている山頂を望むことができる。

 自分史上ナンバーワンは、ボルネオ島北端に近い、サバ州サンダカンの食堂で食べたラクサ。アイランドリゾートからの帰国途中、港から空港に向かう前に「ラクサが食べたい」とリクエストしたのだった。リゾートの専属ドライバーが連れて行ってくれたのはサンダカンの有名店。濃厚なココナツミルクとカレーの辛さのバランスが絶妙で、忘れられない味となった。

左:サンダカンへの中継地、コタキナバルの大衆食堂で。
右:将来の店長が、父親からラクサの調理を教わっていた。

 10年あまり経ってからサンダカンを再訪したときに、「もう一度食べたい」と早起きした。というのも、スケジュール的に最終日に空港に向かう途中で立ち寄るしかないので、朝のフライトの前に食堂に寄るためには、6時にはリゾートを出る必要があったからだ。まだ夜が明け切らない中、いざ、町一番のラクサを食べるために出発した。店の名前は覚えていなかったものの、ラクサの有名店は1軒だけとのことで、一路、店へ!

コタキナバルのラクサはサンダカンのラクサに似ていて、ココナツミルク味が効いたカレー風味。エビ、チキン、野菜、厚揚げと、具だくさんの一品。

 10年ぶりに恋人に会いに行くような期待に胸を膨らませていると、車はとある路地の前で停まった。ドライバーの顔が浮かない。路地の先を見るとシャッターが閉まっている。まさか……。車を降り、シャッターを叩いてくれるドライバー。ほぼ年中無休で早朝から営業しているお店が休業だったのだ! モスリムの断食明けで年に一度だけ休むという、まさかのタイミングだった。「アイムソーリー」と言って申し訳なさそうに戻って来るドライバー。「あなたのせいじゃないし、また来るから」と返しつつ、心で泣いたのだった。

コタキナバルの5ツ星ホテル「シャングリ・ラ ラサリアリゾート コタキナバル」の、ルームサービスのラクサ。チリやライムが品よく添えられていた。

2014.05.06(火)
文・撮影=たかせ藍沙