サンダカン再訪で10年ぶりの恋人に会える?
自分史上ナンバーワンは、ボルネオ島北端に近い、サバ州サンダカンの食堂で食べたラクサ。アイランドリゾートからの帰国途中、港から空港に向かう前に「ラクサが食べたい」とリクエストしたのだった。リゾートの専属ドライバーが連れて行ってくれたのはサンダカンの有名店。濃厚なココナツミルクとカレーの辛さのバランスが絶妙で、忘れられない味となった。
右:将来の店長が、父親からラクサの調理を教わっていた。
10年あまり経ってからサンダカンを再訪したときに、「もう一度食べたい」と早起きした。というのも、スケジュール的に最終日に空港に向かう途中で立ち寄るしかないので、朝のフライトの前に食堂に寄るためには、6時にはリゾートを出る必要があったからだ。まだ夜が明け切らない中、いざ、町一番のラクサを食べるために出発した。店の名前は覚えていなかったものの、ラクサの有名店は1軒だけとのことで、一路、店へ!
10年ぶりに恋人に会いに行くような期待に胸を膨らませていると、車はとある路地の前で停まった。ドライバーの顔が浮かない。路地の先を見るとシャッターが閉まっている。まさか……。車を降り、シャッターを叩いてくれるドライバー。ほぼ年中無休で早朝から営業しているお店が休業だったのだ! モスリムの断食明けで年に一度だけ休むという、まさかのタイミングだった。「アイムソーリー」と言って申し訳なさそうに戻って来るドライバー。「あなたのせいじゃないし、また来るから」と返しつつ、心で泣いたのだった。
2014.05.06(火)
文・撮影=たかせ藍沙