世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第32回は、たかせ藍沙さんが愛してやまない東南アジアの麺類について。
各地方で個性を競うご当地ラクサ
「ラクサ」というスープ麺をご存知だろうか。日本でもアジア料理店のメニューでよく見かけるようになった。マレーシアを始め、シンガポール、インドネシアなどで広く食べられているスープ麺だ。日本で見かけるラクサはたいがいがココナツカレー味だが、実はラクサは地方によってかなり味も麺も違う。地方というレベルを超え、マレーシアとシンガポールでは、どちらもラクサを自国の美食と言って譲らないらしい。そのくらい広く愛されているスープ麺なのだ。
「ラクサ」の語源は、サンスクリット語で「多くの」を意味する「ラク」とも、ペルシャ語で「麺」を意味する「ラクシャ」とも言われている。味の系統としては、おおまかには、カレーラクサとアッサムラクサ(サラワクラクサ)の2種類の系統があり、前者はエビベースのココナツカレー味で、後者は魚ベースの酸味が効いたスープが基本だ。ちなみに、アッサムラクサは、CNNの「世界のベスト料理50」で7位にランクインしている。
私の好きなカレーラクサは、さまざまなスパイスとエビのペーストなどを使ったカレー風味のスープに、日本のラーメンの麺に似た、卵を使った小麦粉の麺を使用したもの。具は、エビと鶏肉、やわらかい厚揚げのようなもの、そしてモヤシや青菜などの野菜とボリュームたっぷり。サバ州でお目にかかることが多い。
初めて食べたラクサは、ボルネオ島のサバ州のカレーラクサだった。かなり前で写真も残っていないが、一瞬で恋に落ちてしまい、以降このエリアに行くたびにラクサを食べている。クアラルンプールとシンガポールの空港に降り立つときには、それが時間の短いトランジットでも、空港内にあるローカルフード店へと駆け込む。
2014.05.06(火)
文・撮影=たかせ藍沙