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こわもてのヤクザやチンピラの役だけじゃない! 役者・哀川 翔の幅広い演技力

 哀川 翔といえば、一世風靡セピアのデビューから数えれば芸歴はすでに38年の大ベテラン。

 最近ではカブトムシ好きの一面も世間に知れわたり、すっかりこわもてでありながら親しみやすいおじさん、という印象が強まっていますが、言わずと知れた“Ⅴシネマの帝王”で、一般的にはこわもてのヤクザやチンピラの役のイメージがかなり強いと思います。

 ですが、実はそうではない役も多く演じています。

 最近“踊るプロジェクト”で復活した、映画『室井慎次 敗れざる者』が話題ですが、室井さんが事件の容疑者になってしまう2005年の映画、『容疑者 室井慎次』では、室井と共に事件の真相を追い、また室井を助けるためにも奔走する荒っぽい刑事を好演しました。

 役者でなく本人として見てみれば、一世風靡セピア時代の仲間である柳葉敏郎を助ける、というシチュエーションなわけですから、当時からのファンは胸熱でした。

 父親役も意外に多かったり、大河ドラマにも3度も出演していて、筆者の中では途中から“Ⅴシネの帝王”ではなく、味があって、締めるときには締めることのできる俳優というイメージにスライドしています。

 また古いドラマですが、1999年の『OUT〜妻たちの犯罪〜』(フジテレビ系)で演じた、闇金業者の十文字 彬は、翔さんが演じた中でもかなり強く印象に残っています。

 一見平凡で地味な主婦が死体を解体、遺棄していることを知り、仕事としてオーダーするようになる。解体の指揮を執っている主婦の雅子(田中美佐子)を、次第にリスペクトするようになり、友情ではないけれどわずかな絆のようなもの、ができていく様子は説得力が高くて、翔さんがさらに好きになりました。

 基本的には強くて頼れる兄貴、なイメージではあるのですが、個人的にはちょっとヘタレたところのある役、弱さも抱えている役を演じている翔さんは、より輝いていると思います。

 今回の役は、ご本人も公式サイトで「ブラックジャーナリストという自分自身初めての役柄をどう演じて行くのか!? 少し悩みました」と語っているように、本心や目的が見えづらい役ではあるけれど、不穏なうさんくささは十分伝わってきています。

 終盤に向けて園田はどんな動きをするのか、楽しみに見たいと思います。

『Qrosの女 スクープという名の狂気』

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2024.11.24(日)
文=斎藤真知子