『ペットショップ無惨 池袋ウエストゲートパークXVIII』(石田 衣良)
『ペットショップ無惨 池袋ウエストゲートパークXVIII』(石田 衣良)

 本書は、石田衣良の代表作『池袋ウエストゲートパーク』(IWGP)シリーズの十八冊目に当たる。今この文庫本を手にしているあなたは、購入前に内容の面白さを保証してもらいたくて解説から読んでいるのかもしれない。その保証をする前に、少しだけ。

 二〇二三年一月一日、大手動画配信サービス・Netflixでテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の配信が始まり、数週にわたって再生回数トップ10入りを果たした。二〇〇〇年四月から六月にかけてTBS系で放送された同ドラマは、石田衣良の同名小説(シリーズ第一・二巻)を原作に、当時まだ二十代だった宮藤官九郎が初めて連ドラの脚本を執筆。メイン演出は堤幸彦監督が務め、キャストは長瀬智也、窪塚洋介、妻夫木聡、坂口憲二、高橋一生、佐藤隆太、阿部サダヲ、小雪、加藤あい、渡辺謙……と、錚々たる俳優陣が名を連ねた。本編終了から三年後に放送されていたスペシャルドラマも、第十二話(「SOUPの回」)として配信。至れり尽くせりだ。

 熱狂したのは、当時を懐かしむ視聴者だけではなかった。配信を機に初めて観た、という令和の若い視聴者からも「面白い」の大合唱を引き起こしたのだ。その中には「激しい」という言葉も混じっていた。なにせNetflixが定めた同ドラマの視聴年齢制限は、十六歳以上推奨を意味する「16+」。飲酒喫煙暴力の三点セットに加え実在のギャングが出演するなど、現在の地上波ドラマではまず不可能な表現が目白押しで令和の今観ても「新しい」映像作品となっていた。ちなみに、『池袋ウエストゲートパーク』は同名タイトルで二〇二〇年にテレビアニメ化もされている(Amazon Prime VideoやU-NEXTなどで配信中)。こちらは、ドラマとは全く違うエピソードが原作として採用されている。

 配信でドラマもしくはアニメの『池袋ウエストゲートパーク』を観て、原作小説を読んでみようと思った人は少なくないはずだ。今この文庫本を手にしている、あなたがそうかもしれない。しかし、実のところちょっと悩んだりはしていないだろうか? シリーズものなのだから、きちんと一作目から読み始めるべきなのではないのか、と。そんなあなたには「どの巻から読んでも大丈夫です」と伝えたいし、「この巻から読んでほしい」と伝えたい。その理由を記すことで、面白さを保証することとしたい。

2024.09.19(木)
文=吉田 大助(書評家・ライター)