『神の呪われた子 池袋ウエストゲートパークXIX』(石田 衣良)
『神の呪われた子 池袋ウエストゲートパークXIX』(石田 衣良)

 石田衣良さんが「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞したのは、1997年秋のこと。そして受賞作を含む単行本でデビューを果たすや人気を博し、このたびシリーズ第19弾となる『神の呪われた子』が刊行された。なぜこれほどまでの長寿シリーズとなったのか、その秘密を石田さんが語る。


 シリーズの主人公は、池袋西一番街の果物屋の店番を生業とするマコト。物語はマコトのひとり語りで、彼と盟友のキングことタカシが、街で起こる様々なトラブルを解決していく。そのスタイルはいまに至るまで変わらない。 

「じつは応募作を書く直前に読んだアメリカの推理作家、アンドリュー・ヴァクスの『凶手』という小説を参考にしました。余計な言葉がそぎ落とされた文体、短い断章スタイルで場面転換し、章と章の間にトランプのダイヤ、クラブ、スペードのマークが入っている。これはいいと思って、使わせてもらったんです」

 短編3本、表題作となる中編1本で単行本にするという構成も1作目以来で、石田さん自身の発案だという。

「短編だけで4本だと、長編を読んだときのようなコクがないので、シリーズ化するなら最後に長めの中編を入れてパンチを出したいなと思って始めました。そうしたら1作目でうまくはまったので、それ以降そのスタイルを続けています。いい塩梅だと思いますね。

 短いものと長いもので書く時にあまり違いはないけれど、長めのものはもう少し複雑に――押したり引いたりしないといけないなとは思っています。あとは、クライマックスをやや高めにする感じですね」

 今回の表題作「神の呪われた子」のテーマは宗教2世。新興宗教にはまる母親に育てられる女子高生の窮地を、マコトが救おうとする。

「安倍元首相の事件のあと宗教2世が世間で注目されて、関連本を何冊か読んだんですが、これはちょっと書くべきだと思いました。親が子供に宗教を強制するのは、立派な虐待ですね。

2023.10.02(月)