最上級の「こもる」楽しさに満ちている
箱根・強羅 佳ら久[神奈川/強羅温泉]

徹底的に宿にこもる旅なら、チェックインからアウトまでのすべてが楽しい宿がいい。日常から楽園へスイッチするのは景色のいい大浴場。手足を伸ばして心をゆるめてリフレッシュする。


部屋には自分だけの温泉。いつでも気ままに入れるから長湯はせずに、ちょこちょこと何度も入る。
あまりにも気分がいいので、有料の貸切風呂も予約してしまった。

贅沢な広さの湯船に庭園付き、飲み物も用意されているので1時間たっぷり楽しめる。泉質はナトリウム-塩化物泉、体を温めて肌をしっとりうるおす保温・保湿の湯。
湯上がりはフリーフローのラウンジへ。スパークリングワインとプティフールをテラスに運び、森の緑に包まれる。

気が付けばスパの時間。五行説をテーマとしたオイルから今の自分にピッタリのものを選び、オールハンドのトリートメントでストレスリリース。

グリルレストラン十邑のディナーは、ひとりの食事はさみしくないかという心配とは無縁。シェフが目の前で調理するグリルコースを、“おひとり様鉄板焼き”で味わえるのはこの宿ならではの楽しみだ。
料理長の赤崎郁洋さんはフレンチの手法を組み合わせた独自の美食を開拓し、鉄板焼きの概念をはるかに超えた境地を表現。

インカのめざめのガレットを鉄板でカリカリに、絶妙の火入れで焼き上げ、相州牛の挽肉とベシャメルソースで「アッシ・パルマンティエ」を仕上げる。
また、鮎をカリふわに焼き、頭と骨、内臓をペーストにして炭の香りをまとわせた「鮎とクレソンのパスタ」は、まるで稚鮎の炭火焼きを頭からかじっているかのような風味に驚かされた。

白身魚はポルチーニ、レンズ豆、押し麦のソースでフレンチの一皿のよう。クライマックスのサーロイン食べ比べは、鉄板焼きならではの火の演出で盛り上がる。


さて、部屋に戻ってほっと人心地。今夜は久しぶりに星を眺めながらゆっくり温泉を楽しもう。


箱根・強羅 佳ら久
所在地 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-8
電話番号 0460-83-8860(9:00~18:00)
客室数 70
ひとり料金/箱根ひとり旅プラン1泊2食付き 97,350円~
ひとり対応/限定数先着
アクセス 箱根登山電車強羅駅より徒歩約3分、小田原駅より無料送迎バスあり(要予約)
https://www.gora-karaku.jp
石井宏子(いしい・ひろこ)さん
温泉ビューティ研究家。年間200日国内外の温泉に赴き執筆する旅行作家。国際中医師を取得し、温泉で心身肌の悩みを解決する『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)を刊行。温泉、食、自然で美しくなるビューティツーリズムを研究。杏林大学兼任講師(温泉療養学)。

2024.09.17(火)
文=石井宏子
写真=橋本 篤
CREA 2024年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。